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中島臨太朗と兼近大樹の創世記⑮
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死ぬことは怖くなかった、生まれたときからいつ死んでもおかしくない生活してたから。
留置所の床の冷たさはこの世の未練なんかこれっぽっちも感じさせず、ただただ母親を泣かせてしまったことだけが心残りだった。
≪大樹はそんなことする子じゃないんです!≫
あのときの母の声は今でも時々思い出すことがある。
留置所で死ぬのが俺の宿命なら受け入れる覚悟はできていた。
でも鈴代が差し入れしてくれた一冊の本が俺に生きろと言った、呼吸をし、血を流し、涙を流し、生きて“兼近大樹を証明しろ”と―――
りんたろーさんと出会って俺は初めて“呼吸”をした。
たくさんの血が体を駆け巡るほど楽しくて、興奮して、感動して、知らない間に涙が流れるぐらい不思議な衝動に駆られて、りんたろーさんの隣りにいて一緒にたくさんの人を笑わせることで生きてることを実感した。
初めてのセックスはやっぱり痛かったけど…りんたろーさんの体温、りんたろーさんの息づかい、りんたろーさんの汗とにおい、俺を抱きしめるたくましい腕、体中あちこちに残る痕跡―――
脳が興奮した、体が喜んだ、そして俺が今までにない幸せを感じた。
≪大樹、ずっと俺の隣りにいてほしい…っていうか、いて≫
そんなこと言われたら…言われたら…
「俺、今、めちゃくちゃ幸せだからっ!!!」
叫んだ瞬間、こっ恥ずかしくなって照れ隠しを笑って誤魔化した。
いや、はっずーーーーーっ!!!!!
やっすいドラマかっ!!!って俺、あんまりドラマ見ないけど…
うわー、りんたろーさんの顔、見れねぇ…もうこのまま寝るっ!!
つーか…りんたろーさんの反応がない…どうせ、バカにしてるか、笑い堪えてるんだろうな…くっそー…
「りんたろーさん……って、えっ!?!?」
思わず起き上がろうとしたが、そこはしっかりとりんたろーさんに制止された。
「何…どうしたんすか…?」
キョトン顔のりんたろーさんの頬には涙のすじが光っていた。
「幸せ…?」
「はい…」
「おまえからその言葉聞けて嬉しい…」
「・・・・・・」
「おまえが…幸せを感じてくれて…嬉しい」
「りんたろーさんと出会えたから…」
「それはこっちのセリフだよ…おまえと出会えて良かった…ありがとう」
共に息をして、汗を流し、涙を流し、血が駆け巡る、共に笑って共に泣いて共に……
(あっ…“たいじゅ”だ…)
俺はりんたろーさんが寄り添える大きな樹のような存在でありたい…鶏ガラみたいなほっせー脚だけどさ…
成分はこうやって時々、りんたろーさんがあつい情熱と愛をくれるからこの瞬間生きてるって実感……
(ん…?成分…水分…あーーーっ!!!)
なしなしなしなしっっっ!!!!!
何考えてんだ、俺っ!!!
ったく、こういう影響は受けたくねぇ!!
生きてて良かった。
あのとき、あの本に出会わなければきっと俺は・・・
ありがとう、鈴代―――
人を愛する喜びも人から愛される喜びもおまえが教えてくれた。
会いたいな、会ってりんたろーさんを紹介したい。
(でも…それは鈴代を傷つけてしまうのだろうか…)
今度、りんたろーさんに聞いてみよう…逆にりんたろーさんが嫌がるかな…下手したら両方に嫌がられる可能性も……
それでもやっぱり鈴代には伝えたい、
俺は幸せだよ、と。
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