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Angel of oblivion
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横浜駅の近くにあるパチンコ店、ここで収録するのはもう3度目ぐらいになるだろうか。
大体、いつもこの収録を楽しみにしてる兼近の方が先に来てるのだが―――
「おいっす~…って、あれ、かねち、まだ来てないんだ」
「寝坊したみたいですよ」
「アイツ、やりやがったな」
加減しろって言ったのに。
でも……
そうだよな…ゲームしたかったよな。
思い切って声かけてみようかと思ったがやっぱりアイツの楽しみを奪うわけにはいかないな…
(久々にあんちゃんに連絡してみようかな…)
バァンッッ!!
「すみませんっっ!!!遅くなりましたぁぁ!!」
「お…おっす…いや、俺も今着いたばっかだから…」
控え室のドアを勢いよく開けて兼近が入ってきた。
鮮やかなオレンジのバケハから見えるピンクの襟足がはねている。
(そこがはねるってことは今日の寝癖はかなり高レベル…)
「今日もあちぃね…」
「ですねーっ!!」
バケハを取ると、案の定…いや、いつも以上の寝癖がはねていた…ここまでくると桜というより満開に開いたチューリップだな…
(いやぁ…すげぇごまかし方してる俺…兼近を誘えない憂鬱さで女友達の名前出すとか最低にもほどがあるだろ…)
「どう寝たらそんな寝癖になるんだよ」
「めっちゃ急いで寝る」
「意味わからん、乾かさなかったの?」
「上半分だけ乾かします」
「あー…気づいたらとっくに0時過ぎてて急いで風呂入って上半分だけ乾かして急いで寝て寝坊するとこのようになる、と」
「…2時でした」
「やったな、おまえ」
「アハハハッッ!!!」
(一か八か…声かけてみるか…?)
「かねち…あのさ…」
コンコンッ。
「おはようございまーす」
「おいっすー、朝早くありがとねー」
「いいえ。兼近さん…いつにも増して芸術作品ですね」
「すごいっしょ」
このパチンコ番組はスタイリストはつかないから衣装は私服だが、あとに番組収録が控えてるときはメイクさんがここからついてくれることが多い。
「先に兼近さんの芸術作品ぶちこわしましょー」
「俺、これでもいいけどなー」
メイクさんがピンクの満開チューリップに霧吹きをかけ始め、芸術作品とやらを崩していく。
チューリップの花びらが少しずつ萎れていく―――
そういや髪の毛にも触れてない…いや、どっかで頭ポンポンはしたかな…覚えてねぇーや。
(その髪に触れたい…柔らかい繊細な髪に…)
そして…
スマホをいじりながらメイクさんにわけわからんボケをいいまくるその自由奔放な薄く小さい唇を塞いでやりたい…
(仕事先でこんな気持ちになるなんてことほとんどなかったのに…EXITのりんたろー。が崩れてきたか…仕事と言っても半ばお遊び的なこの番組の雰囲気がそう思わせるのか…それとも…)
この後、保険的にこじとYouTubeの打ち合わせの約束入れておいて良かった。
静かになったかと思ったらメイクさんとの会話が切れてガス欠したかのように目を閉じてる兼近を見てそう思わずにはいられなかった。
触りたい…触りたいよ、かねち。
一番近くにいるのになんだか今は一番遠くに感じるな…
おまえはどう思ってんの?
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