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Angel heart
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「りんさん、どしたの?」
「えっ…あ、いや、すげぇチャラいバーに圧倒されてました」
「いや、たしかにチャラいけど、圧倒されて言葉失うほどではないと思うんだけど」
「いや、失う」
(嘘…全く興味ないから言葉が出てこなかっただけ…)
まぁ、でも改めて見て内装はカッコイイよな…
黒と茶色で統一された店内はどこかヴィトンを思い出させる。
照明は特注なのかシャンデリアとミラーボールを合体させたような鮮やかなもの。
(今の俺には趣味悪ぃとしか思えんのだが…)
モヤモヤの気持ちが全く関係ない照明にやつあたりさせてる。
(ちっちぇーなぁ…
ん…?よく見たらところどころに…)
「すごくない?エメラルドとピンクサファイアが埋まってるらしいよ」
それらに光が反射してグリーンとピンクのアクセントが店内のところどころに華を咲かせてるようだった。
(俺達みたいだな…)
プレオープンのこの日は招待客だけで賑わっていた。
顔見知りのモデルやグラビアも何人かいる、昔遊んだ子もいたなー…以前までは手当たり次第、声かけては遊んだりしたけどいつ頃からだったろうか、彼女達と遊ぶことになんの意義もないことに気づいた。
酒飲んで、喋って、うまくいけばベッドになだれ込んで―――
その時間は楽しかった、でも何も残らなくなってしまった。
結婚を考えた彼女とも別れた、彼女との結婚に幸せを見出せなかったからだ。
(そもそも意義ってなんだよ、幸せってなんだよ…)
決して彼女が悪いんじゃない、女の子達を軽視してるわけでもない。
「りんちゃんっ!!」
「おおー、久しぶり、元気してた?」
「久しぶりじゃないよー、私、この前のTGC出てたんだからねー」
「え、マジ!?ゴメン、全く気付かなかったわー」
こいつは以前、前のコンビ時代に何度かモデルとのコンパを仲介してくれてたヤツだ。
結局、北見目当てだったんだけど。
「ヒドイよねー、ねー、かねち来てないの?」
「残念、かねちはこういうとこはきません」
「ねぇ、今度紹介してよー」
「一回会ったことあったじゃん」
「DMしてもなんの反応もないんだもーん」
「じゃぁ、興味ないんだわー」
「ホントに遊ぶタイプじゃないんだね…」
「だね…」
「変な意味じゃないんだけどさ、そんな全く正反対なタイプとコンビ組んで楽しい?」
「楽しいよ、毎日が楽しい」
「ふーん。じゃなきゃコンビ組んでらんないよね。ねぇ、りんちゃんでもいいからあっちにいこ。紹介したいのよー」
「いいからでいくわけねーだろ」
「りんさーん」
(こじ、ナイスタイミング)
「今行くー。わりぃ、終わったら行くから」
「わかった、待ってるねー」
金と名義とプライドと欲望と―――
誰だって持ち合わせてるものだ、生きる糧になることもある。
人を愛する上でそれらを天秤にかけることだって当たり前のことだろう。
でもそれらには全く興味を示さず、ただただ純粋に無償で人を愛することができ、ただただ愛されることだけを望んでいる人間がいるならば…
現れたんだ、ある日突然俺の目の前に。
≪りんたろーさん、俺と一緒にM1かきまわしましょう!≫
まさか男だとは思わなかったが、天使だとも思わなかった。
そう、あのときも羽根はあったんだ―――
「こじ、俺、今日は帰るわ」
「うん、りんさん帰ってくんないとおみやのシャンパン、つばさちゃんにあげる約束しちゃったからさー」
「おーいっっ!!!」
「かねちくん、酒ダメなんだよね?」
「うん…って…えっ!?」
「ハイ、これ」
「何、これ」
「前にココアあげたじゃん?そいつが今度はノンアルコールワイン出したからかねちくんの分もと思って」
「こじ…ゴメン…マジでありがと」
「なんでだよ、かねちくん待ってんだろ?」
「いや…それが俺からはなんも言ってなくて…」
「何してんのー、早く連絡して。さっきのコには俺から言っとくから!!」
「サンキュー、この埋め合わせは絶対するっ!!」
「埋め合わせも何も最初からなかったでしょー」
こじの優しさが俺を後押しした。
体は秒で店の外に飛び出していて、大通りに出て手をあげるとすぐに止まったタクシーのタイミングのよさにさらに後押しされた感じだった。
松下に兼近の夜ご飯は作らなくていいとLINEをし、途中、青山に寄り道をしテイクアウトで兼近の大好きなキノコの和風パスタを二人分購入、もう一品ぐらい何か欲しいなと思ってたところ、松下からの返信。
(“前にりんさんが家にきたときにつまんで旨いって言ってたシュート特製なんちゃってシチュー煮食べますか?大量に作ったんで”…マジでー!?それはありがたいっ!!!)
ビーフシチューの汁気を飛ばしてたくさんの野菜がはいったあれ、旨かったんだよなー、パスタが和風だからちょうどいいっ♪
『食いたいっ!!!』
『わかりました、かねちに持たせます!!冷凍のままなのでチンしてくださいねー』
『センキューっ!!!』
よし、あとは兼近になんて言おう…
つーか、なんでアイツにLINEするぐらいで緊張してんだ、俺!!
かっこつけてもダサいし、強制的なのも良くないし…
うーん……
なんか恋してんな、俺……
これが無難かな…
『パスタ2人分買っちゃったんだけど…食う?』
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