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Angel voice
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「おつかれっしたーっ!!月曜もよろしくでーす」
「おぉ、おつかれー」
俺んちに先に着くつもりがりんたろーさんの目的地の表参道に先に着いてしまったため、眠りこけてた俺は起こされたときに初めてりんたろーさんの膝枕で寝てたことを知る。
そこはちゃんとすみませんって謝ったけど…なんかりんたろーさん、呆れた顔してたなぁ…
(コンビとはいえ、先輩の膝枕で寝るって…)
「俺、ずっとりんたろーさんの膝枕で寝てたの?」
「はい。発車して5分も経ってなかったと思います」
「優しいお兄さんですね、時々、あなたのお荷物落ちないように抑えてたり、帽子直してあげたりしてましたよ」
「運転手さん、兄弟じゃないんです…」
(山岡さん…笑い堪えるの必死すぎなんですけど…)
「あ、これは失礼しました…ハハハ…てっきりご兄弟かと…」
「いえいえいえ…」
(山岡さーーーーんッ!!!もう完全に苦しそうじゃんかよー…)
優しいお兄さんか……
ホントに優しいよ、りんたろーさんは。
俺にしかわからない優しさがあるんだよ……
ギュッと抱きしめてほしかった、名前呼んでほしかった……
キス…して欲しかった……
一番上にピン留めしてるりんたろーさんのLINEにも未読の数字はつかず、試しに開いてみても昨日送られてきた“明日寝坊するなよー”の一文だけ…求められてないってわかってんじゃん…それでも一縷の望みを期待してしまう…
「おつかれさまでしたーっ、山岡さんもゆっくり休んでね」
「ありがとうございます、おつかれさまでした」
事務所でまだ作業があるというので山岡さんを乗せたタクシーを見送り、コンビニで水とちっこい袋のチョコを買い、自宅へ戻るとPANAはまだ仕事先から戻らず、もっちーは……
カタカタカタ…
俺らのYouTubeの編集作業をしていた。
「たっだいーっ!!」
「おかえりー、ちょうどいいとこ帰ってきた。兼近に見てもらいたいところがあるんだけどさー」
「お、何?ちょ、ゴメン、少し食ってからでいい?」
「ああ、ゴメン、休んでからでいいよ」
PANAが冷凍してくれていた昨日の晩御飯の残りのカレーを玄米にかけてかきこみ、もっちーの作業の進捗をチェックしたあとは二人で対戦型ゲームに夢中になり、気づけば時計は19時をまわっていた。
あと数時間で今日が終わる…りんたろーさんからの通知はまだない。
「はー…」
「あ、何、俺に負けたのがそんなショック?」
「すっげぇショック…」
「たまには俺だって勝ちますよ」
「もっちー、ズルしてない?」
「してねぇーよ、どうやってすんの!!」
「俺のスリッパをさぁ~…」
「今、スリッパ全然関係ねーしっ!!」
「アハハハハッ!!」
「キーーッ、キーッ」
「善も笑ってるーっ!!!」
「最近、善ちゃんにバカにされてる感じがすんだよなー」
そうだ、俺には同居人と一羽のインコがいる。
「ただいーっ!!」
「おかえりーっ!!善ちゃーん、ご主人帰ってきたよー」
「おかえりー、PANAご飯が帰ってきた」
「なんやねん、それ」
PANAのご飯で腹を満たし、3人でゲームをして、くだらねぇ話をして、笑って…
サイコーじゃん。
眼下のスマホにLINEの通知がきたことに気づきはしたが、もうりんたろーさんじゃないって思ってるからもっちーとの会話に夢中になって気づかないフリをした。
「かねち…ゴメン、一瞬見えちゃったんだけど…」
「何?」
「LINEのアイコン、りんさんぽかったけど…」
「えっ…」
スマホの画面を開くとたしかにLINEの通知はあった。
アイコンをタップする手が震えている、LINEを開くのがこわい。
(どうしよ…)
「急ぎかもしんないよ~?」
もっちーの一言に勝手に指が動いた。
『パスタ2人分買っちゃったんだけど…食う?』
「PANA、ゴメンっ!!!俺の分、別にしといて!!!」
「何言うとんの、最初から用意してへんよ、かねちの分なんか」
「えっ…あ、そうなの…?」
「りんさんとこ行く思うてたからかねちの分はないですよー」
「行かなかったらどうすんのよー」
「大好きなりんさんに呼ばれて行かない選択肢、かねちん中にあんの?」
(返す言葉がない…)
もっちーはニヤニヤしてる…正直キモい。
「わざわざ俺に“かねちのご飯はいりません”って連絡よこすぐらいなんやからね」
「えっ!?ホント!?え…だって間違えてパスタ2人分買っちゃったみたいだから…」
「りんさんが間違えて買う人かー?あ、和風か洋風間違えた可能性はありそうやな。ほら、はよ支度せんと」
「あ、うん!!」
体は勝手に動きだしていた。
ガタガタガタ…ガターンっ!!!
「かねちー、やかましいー、善がビックリするー」
「ごめーんっっっ」
手が震えて思うようにリュックに荷物が入らない、荷物って言ったってひげそりとゲームと財布ぐらいしかないんだけど…
「落ち着けやー、めっちゃ乙女やん」
もっちーは相変わらずずーーっと笑ってる…
「かねち、これ二人で食べて」
「何~?」
「りんさんが前にうちでこれ食べたときにウマいって言ってたから持たせますかって聞いたら持ってきてーって言うてたから」
「すげぇ…ありがとっ!!!」
「タッパ―は持って帰ってきてな」
「うん!!!行ってくる!!!」
「待って待って、かねち、こっち向いて」
「えっ!?」
カシャ…ずっとニヤけていたもっちーが口を開いたと思ったらいきなりスマホで俺を撮った。
「ハイ、かわいいー♡」
「はぁ?」
「いつかの日記に載せよーっと」
「別にまぁ…いいけど…」
「題・恋する乙女!!いってらー」
「いってらー、嬉しいからってタッパー、ブンまわすなよー」
「ほーーーいっ!!!」
最後は俺を選んでくれた、俺を求めてくれた…ってことでいいんだよね…?
エレベーター、こんな遅かったっけ…豊洲まで遠いなぁ…どこでもドアあったらなぁ…
早く会いたい。
早くりんたろーさんに会いたい。
恋をするってこういうことなんかな…今だに俺にはわからない。
でも30年間生きてきてこんなに一人の人に感情が揺さぶられて体が動き出すのは初めてなんだよな―――
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