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空虚(2)
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目が覚めたのはあれから丸1日経った頃だった。心配そうに覗き込む父親の顔が軍の長なのだろうか、と疑うほどに今にも泣き出しそうな表情になっていた。
カレンは徐々にクリアになっていく意識に、どうしてそんな表情になるまで無理を強いるのか、そっちを考えないのかとぼんやりと思う。
「…カレン、目が覚めたかい」
「ベリアル様……ご心配、おかけしました」
ベリアルはカレン返答に安堵し頬を緩める。
カレンは軋むからだを起こし、ベリアルに向き直る。
「ベリアル様、そんなに急がなくても私は逃げたり致しません。なにか不安なことでもございましたか?」
ベリアルにとっての愛情表現は、肉体的関わりによる表現だということはカレンも重々承知である。魔界に降りる度に求められ否定せずに応対はしている。別にカレンにとって嫌なことでは無く、むしろ半分父親の血を引いている為喜びとして受け取ってもいる。
しかし、無理やりにでも生体強化を図り魔族の血を流し込み、根生果てるまで貪られるのは珍しい。過去に全くなかったといえばノーであるが、さすがに来てなにも身に覚えのない状況で至るのは流石にカレンも驚いた。
「…お前の事を疑っているわけではないのだが、幾分地上に居る日数が恨めしくてな…今は平穏期に入って世界の調和が取れている…それなのにお前は全然顔を見せないではないか」
「…」
「私は…お前も母親のようにいつ私を裏切るかもしれない…その時はその時だ、仕方の無いことなのは重々承知だ…だが、それでも私はお前の事を愛しているのだ…」
不安、嫉妬、妬み…悪魔の性質から来るマイナス感情に押しつぶされた結果、顔を見た途端に爆ぜたのだろう。性質を持ち合わせたまま人に似たて作り上げた理性はなし崩しに崩壊する。それがこの世界の理、人間の負の感情を押し流された魔界の性質。
カレンは悔しそうに俯くベリアルの頬に手を差し伸べる。
魔界の辛気を1日浴びた体は無理矢理戻された体に馴染み、伸ばした腕の先に浮かぶ紋様は徐々にハッキリ浮き出てくる。母の血が半分流れる体とて全てを浄化することは不可能。徐々に変化する体が父親に近付く不思議な感覚。
「ベリアル様、ここに留まることは難しいですし…あなたを裏切らない事も約束できません。ですが、今はあなたの側にいてここにいますから…」
慰めるつもりがあるような、無いような。ベリアルは自分に触れるカレンの手に手を重ね、するりとずらすとキスをする。
「…仕事はこれで大方落ち着くはずだ。カレン、私の元へ戻って来ないのは分かっているが…せめて今は私だけ見ていてくれないか」
この人は甘い言葉とこっちが恥ずかしくなるような言葉を次々と並べ伝えてくる。
「当たり前じゃないですか、それに私は半分あなたの物のような物です」
嬉しそうな複雑な笑みを浮かべ、ベリアルはカレンを抱き寄せる。初日からこんな調子で大丈夫か、と強制実家帰省に頭を悩まされることになった。
続
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