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7-③
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心臓の音がうるさい
当事者でもないのに緊張で口が渇いていく
(なんで俺が緊張してんだよッ)
いつの間にか手を硬く握りしめていた
静けさが、沈黙が永遠に続くんじゃないかと思われた時…
「俺…好きな人がいるんだ。だから…ごめん」
佐久間が口を開いた
「ッ……」
頭を下げて誠実に応える佐久間の言葉にドキリッとさせられる
同じように女の子が息を呑んだのが、こっちまで分かった
「好きな人……う、ううん…そっか……」
佐久間が言う好きな人…
それが自分だとは思えない
告白している女の子は、可愛くて小さくて。
俺だったら特に取り柄もない冴えない男よりも、こんな可愛い子の方が好きになるに決まってる
俺が見ても佐久間は顔はイイし、それに見合った体格、性格も変態発言さえ無ければ、いたって親しみやすいと思う
1年の頃、可愛い女子と付き合っている
そんな噂はしょっちゅう耳にしていた
だから、俺じゃないだろう
俺じゃ…
「なんとなく…分かってたんだけど、よく一緒にいる人?」
俺の疑問を代弁するかのような女の子の言葉
それを聞いた佐久間が静かに言葉を紡ぐ
「うん…すっごく優しい人で、困っている人が居たら真っ先に行動してさ。見ず知らずの奴にずっとついててくれて…知れば知るほど気になって…
いつの間にか、春日の事、好きになっていた」
(ーーーッ)
揺るがない眼差しで思いを伝える佐久間を見ていると
胸が熱く
締め付けられた
しばらくの沈黙の後、弾かれたように顔を上げた女の子は「来てくれてありがとう」と言葉を残して帰って行く
女の子の足音が遠ざかり、静けさが戻ってくる
時折、グラウンドで汗を流す生徒達の声が聞こえ、風が吹くたび木々の揺れる音が耳に届く
でも俺の耳には心臓が激しく打ちつける音が止まらない
頭の中では佐久間が言った言葉が反芻する
(冗談とかじゃなかったんだ…)
佐久間が俺に告白してきたり、変態発言の数々は、頭のどこかで暇つぶしとかだろうと
まだそう思っていたのに…
どれぐらい地面にへたり込んでいたのか
不意に頭に手を置かれた感触がし、横を見ると悦郎が俺の頭を撫でてきた
「旭、付き合ってくれてサンキューな。じゃあ俺っち先帰るわ〜」
いつもの調子の声
最後に髪をクシャリと撫で、その場から立ち去っていった
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