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マヌルネコ
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「無理だと言っているのがどうして分からないんだ! 俺にばかり我儘を言うな」
「じゃあ、ママのところに行くもん! レグなんか知らない!」
──ひどい……。
ユキは人見知りなのだと、レグルシュは言っていたが、すぐに千歳と仲良くしてくれた。
小学校に上がる前の子供にしては、話し方もしっかりしているし、使える言葉も多い。
ユキは賢いから事情を話せば、きっと分かってもらえると思うのに。
本当に外へ出ていこうとするユキを、陰で見ていた千歳は止めようとした。
『他人のお前に言われなくても分かっている』
『ちょっと懐かれたくらいで、まるで親気取りだな』
昼間のレグルシュの言葉を思い出した。
ユキの肩ばかり持つのは、ユキのかわいそうな部分しか見ていない偽善かもしれない。
それに、千歳が慰めても、ママと会えないことにはユキの寂しさや悲しみが癒えることはないのに。
「レグなんか嫌いだっ! ママのところに帰りたいっ!」
レグルシュが片手を振り上げるのを見た途端、千歳の迷いは霧散した。
顔のあたりに衝撃が走り、千歳は真横へ転んだ。
「ちー!?」
ユキが受けていたら、大怪我をしていただろう。
ユキの大きくなった泣き声が耳に届いたが、ぶれた視界で無事だと確認でき、千歳は安堵した。
「お前、何を」
「……通りかかったらたまたまレグルシュさんの手が当たっただけです」
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