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La・Ruche
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しかし、続いた拓海の一言で、千歳の迷いは打ち砕かれた。
「千歳がいないせいで、会社の経理が今めちゃくちゃなんだ」
「は……?」
拓海は顔を近付け、潜めた声で言った。
「めちゃくちゃって、どういうこと?」
千歳はアドルカを退職する前、経理や財務関係は全て整理して、拓海宛にデータとして送っている。
次の日から他の社員に任せても、差し支えないくらいの業務のはずだ。
「いや……それが……よく分からなくて」
言葉を濁す拓海を、千歳は冷めた目で見つめていた。
あんなに頼もしく思っていたパートナーが、卑小な存在に映るのだ。
「会社に戻ってきて欲しいって、拓海は言いたいの?」
「そう! そうなんだ。もう少しで税理士の資格も取れるんだろう。ちょっと見て直してくれたら」
──少しでも、仲直りをしようとした自分が馬鹿だった。
恋人として、将来の番としてやり直そう、と今の今まで拓海の口から一言も聞けていない。
「……恋人として、戻ってきて欲しい訳ではないんだね」
「だってそれは、あんな事があった後だろう。俺も冷静に考える時間が欲しいというか……」
「冷静になるために、僕を追い出したの? ……だったら、痴漢にあったこと。きちんと警察に行って、事件にしてもらうべきだった。そうすれば、浮気じゃないって拓海も納得出来たでしょう」
「け……警察!? ちょっと抱きつかれたくらいで、そんなに大袈裟にしなくてもいいだろ」
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