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ユキ
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まどろっこしい態度に、樹への疑惑はますます深くなるばかりだ。
半ば八つ当たりのようだと分かってはいても、強い言葉を吐いてしまう。
「ぱぁぱ……」
切なげに名前を呼び、ユキは樹へと手を伸ばす。
千歳とユキの間にはない繋がりが否応なく見えてしまい、覆しようのない事実に俯くしかなかった。
この二ヶ月間で培ってきたユキとの関係が、無惨に断ち切られた音が脳の奥で響いた。
──分かってた……分かってたんだから。
ユキの本当の親にはなれないこと。
ユキが幸せになるためならば、傷ついてもいいと、今いる場所を手放してもいいと、覚悟を決めたつもりだった。
──僕なら、僕が親だったら……ユキくんに絶対、寂しい思いはさせない。
「あっ……」
ずくん、と疼きが大きな波のように拡がった。
速くなる呼吸の中に、甘い声が溶けている。
「あ、うそ……」
「ちー? ちー、どうしたの?」
「あ……触らないでっ!」
伸ばされた小さな手を、千歳は思わず振り払ってしまった。
ピルケースから緊急用の抑制剤を取り出し、舌の裏で溶かした。
舌下型の抑制剤は五分と経たないうちに、成分が吸収される。
噴き出すような汗はすぐに収まり、頭に上った熱は散っていく。
薬が上手く効いてくれたことに、千歳は泣き出したくなるほどの安堵を覚えた。
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