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第2話
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Kとのセックスは麻薬のようである。優しい笑顔で甘い言葉を囁きながら、全身を蕩けさせ、焦らされる。欲しくて欲しくてたまらなくなって、何も考えられなくなって、大悟はただKを求めてしまうから。
カーテン越しに朝の柔らかな日差しを感じ、大悟はゆっくりと目を開け放つ。
「おはよう、ハニー」
いつから起きているのか、大悟が目を覚ますと、必ず側でKが笑って応えてくれる。
「おはよ……ごめん、また寝ちゃってた」
以前は眠りが浅かったのに、Kと暮らすようになってからは寝起きが悪くなっていた。
「いいよ、いいよ。ハニーをお世話するのは俺の役目だからね」
セックスの最中に意識を飛ばしてしまい、気がついたら風呂場だったこともある。Kの飛沫を掻き出すはずが、とろとろに蕩けさせられ、また鳴かされて、意識を失う。こんなことばかりを繰り返しているのだから、寝起きも悪くなるというものだ。
「まだ眠いよね? もうちょっと寝る?」
「ううん、学校、行かなきゃ……」
大悟は眠い目をこすりながら、むくりと起き上がる。しわしわになってしまったKのシャツを着たまま、スリッパを履き、部屋を出た。
「えー、毎日行かなくていいじゃん」
開けっ放しの扉から、Kの声が聞こえてくる。
「平日は学校行くよ。Kも会社行かなきゃでしょ」
大悟は部屋を出て、キッチンに向かい、コーヒーメーカーに水をいれて、スイッチを入れる。その後洗面所に行けば、Kがタオル片手に佇んでいた。
「いいよ、ひとりで出来るから」
「ハニーのお世話は俺の役目って言ったじゃん。ほら、顔を洗って、学校行くなら早く準備しなきゃでしょ?」
そうは言っても、Kは裸で朝ということもあってか、見事に勃っている。アレが大悟の中に入って、感じて鳴かされているのかと思うと、無性に恥ずかしくなるのだ。
「それとも、ここでヤっちゃう?」
大悟は即座に首を横に振って、顔を洗った。その言葉に流されたら、次は夕日を見ることになってしまうから。
文部大臣であった日向匡は、四年前の一家惨殺事件の犯人が息子の田村一樹であること、息子の犯行を隠すべく無実の人間を犯罪者とし、生き残った未成年の被害者を海外で軟禁状態にしたことを認める遺書を残し、自殺した。日向の指示を受けて関わったとされる秘書官角田、伊藤は何者かによって殺害されていた。
現役閣僚の衝撃の告白と自殺に加え、刑が確定した事件での犯人の取り違えという前代未聞の事態に、警視総監自らが会見を開き、事件の再捜査を明言。元被告、唯一の生存者への謝罪と賠償がされることが決まったが、世間に与えた影響は大きく、連日報道された。
「ハニー、パン焼けたよ」
その唯一の生存者である大悟は、今ようやく学校へ通っている。騒動が落ち着くのと編入の手続きなどに二ヶ月を費やした。
「はーい」
ダイニングテーブルの席について、大悟はミルクたっぷりのコーヒーとトースターで焼いたパンにバターを塗って口に入れながら、Kの着替えを眺める。服装はシャツとジーンズにジャケット。長身で足も長いKは、ほとんどのこのスタイルであるが、惚れ惚れするくらい決まっている。
「Kはコーヒーだけでいいの?」
「うん。会社で食うから」
会社は仕事をするところなのに、そんな呑気でいいのだろうかと大悟は思っている。
「俺のことは気にしなくていいの」
そう言うと、Kは大悟の右頬に肌色のシートをぺたりと貼りつけた。周囲の皮膚と馴染ませれば、あっという間に傷痕が隠れる。
「見事に隠れるもんだよなぁ」
頚部にも同じようにシートを貼れば、傷痕は全くわからない。学校へ通う大悟のためにと、レイが作ってくれた。
「貼って剥がせて洗えるし、全然痛くないんだよ。レイはすごいなぁ」
コンピュータースキルだけじゃなく、なんでもそつなくこなす。レイみたいになれれば、Kとつりあうのではないかと、大悟は密かに思っている。
「まあ、この件に関しては感謝してる」
大悟の身元引受人となった花村が学校側と協議し、校内では花村大悟という名前で通すことになった。事情を知っているのは校長と教頭、クラス担任の三名しかいない。傷痕は隠すのが正解である。
朝食を終えて、部屋を後にする。地下駐車場までエレベーターで降り、Kの車の助手席に乗り込む。
「じゃあ、ネクタイ結ぶね」
大悟の通う学校の制服は、グレーのブレザーとスラックスに紺色のネクタイである。ネクタイは俺が結ぶからとKに言われているため、大悟の着替えは首元にネクタイをぶら下げるところで終わっている。
Kのしなやかで長い指がネクタイを手にする。この指が大悟の蕾をこじ開けて、中を掻き回すのかと思うと、ドキドキしてしまう。
「はい、出来た」
キュッと首元まで締めた後は、必ずキスをくれる。最初は誰かに見られやしないかと不安だったが、毎日続くと慣れてしまった。
「じゃあ、学校までドライブね」
Kは青色の瞳を隠すため、薄いブルーの色付きサングラスをかける。スマートで大人で何をしてもカッコよくて、こんな完璧な人が恋人でいいのだろうかと大悟は思う。
「早くハニーと一緒に出勤したいなぁ」
駐車場を出て、一般道で車を走らせながら、Kが言った。
「そう、だね」
カナダから連れ出してもらって、たくさん愛してもらって、いつも護られてばかり。なのに、大悟は何一つ返せていない。
早く大人になりたい。Kの支えなしで、ひとりで立てるようにならなきゃな。
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