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第4話
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大悟が編入した私立高校は、花村が出資している。そのため、大悟はハナムラグループ代表の花村謙三の養子、花村大悟ということになっている。こうしておけば、Kが車で送り迎えすることに違和感がなくなるから。
さてと、ここから先は花村大悟だな。
校門前で一旦立ち止まり、大きく息を吐き出す。ぼんやりしていると、名前を呼ばれても返事が出来なかったりするのだ。大悟は下駄箱で靴を履き替え、三階まで上がり、教室へと足を踏み入れる。まだ早い時間ということもあって、人はまばらであった。
「おはよ、花村」
大悟の席は窓際の一番後ろだ。その右隣に座っていたはずの鳥居勝馬(とりいかつま)が、どういうわけか、大悟の前の席に座っていた。
「おはよ。席変わった?」
「転校生がくるから移動しろって言われてさ」
転校当初はクラスメイト達が大悟に話しかけてきたが、積極的にコミュニケーションを取らなかったこともあり、自然と誰も寄りつかなくなった。それでも、席が隣ということもあってか、鳥居だけは、今も変わらず話しかけてくれる。
「おまえと同じカナダからの編入だってさ。知り合いじゃねえの?」
事情が事情なので、何かあれば担任から連絡があるはずだが、そんな話は聞いていない。
「何も聞いてないけど……」
カナダからの転校生と言われて、藤原のことが頭に浮かんだが、彼自身が日本に戻れない身の上だと言っていた。
藤原がいてくれたら、Kの負担が減るんだけどな。
Kは朝だけでなく、帰りも学校まで迎えに来てくれる。その後ふたりで組織のダミー会社であるハナムラコーポレーションに行き、大悟はレイの手伝いをするのが日課になっていた。
そういえば、Kって仕事してる感じが全くないよなぁ。
オフィスでは大悟にぴったりくっついていて、レイには怒られ、マキには呆れられている。どこからどう見ても仕事らしい仕事はしていない。それなのに、彼ら以外の人達は何も言わず、まだ半人前の大悟にも、優しく接してくれるのだ。
鳥居と他愛のない話をしているうちに、始まりのチャイムが鳴った。生徒達が席につき、担任がひとりの少年を連れて、教室に入ってきた。
「まず転校生を紹介する。花村と同じカナダの高校からの編入生だ」
「おはようさん、カナダの前は大阪におったバリバリ関西人の藤原和己や。よろしゅうな!」
まさかの人物が目の前に現れ、大悟は思わず立ち上がった。
「ふ、藤原!?」
「おう、大悟、今日からまた一緒やな!」
言うまでもないことだが、カナダでも日本でも、藤原は藤原だった。
「なんだ、やっぱり知り合いじゃねえか」
前の席の鳥居が振り向いて笑う。
「え、や、その、知り合いというか……!?」
突然藤原が現れ、大悟は激しく動揺した。友達だと言っていいのか、それとも知らないフリをした方がよかったのか、どれが正解なのかわからない。
「知り合いなんて他人行儀なこと言わんとってや」
そう言うと、藤原は大悟の隣の席にやってきた。
「俺ら、めっちゃ濃い関係やん」
そう言って藤原は大悟の肩を抱く。パニック状態の大悟は振り解くことすら出来ず、呆然としていた。
確かに藤原には色々世話になった。Kと初めて繋がる際、レクチャーしてもらった。彼が居てくれたからこそ、大悟はKの恋人になれたのである。
「濃い関係って、おまえらつきあってんのかよ」
鳥居が冗談めかして言った。違うと言おうとした大悟より先に、藤原はニヤリと笑い、こう言い放った。
「そやな。少なくとも俺は大悟がめっちゃ好きやで」
転校初日の藤原の爆弾発言に、クラスは湧いた。次から次へと襲ってくる高波に、大悟はさらわれるばかりである。
こんなの聞いてないし、どうしたらいいんだよ!?
「そういうわけやから、皆で俺の恋路を見守ってくれよな!」
堂々と言い切った藤原に、大悟を除くクラス全員は拍手を送った。藤原の転校の挨拶は衝撃的に終わった。
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