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第18話
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Kがレイを会社に送り届けている間、大悟はノートパソコンを起動させた。
「どうするんや、大悟。猶予は明日一日しかないで」
「うん、やれることはやるつもり。藤原とミカちゃんさんは帰っていいよ」
「ここまできて、俺に手伝わせへんつもりか!?」
藤原は不服を訴え、立ち上がる。
「ここから先は、ハナムラの仕事だからね」
パソコンを操作しつつ、大悟は考えていた。
話の途中でKは何かに気づき、レイに問いかけようとした。それを察したレイは首を横に振った。おそらく、ふたりの間で何かしらの気づきがあったということ。だとすれば、これ以上藤原を巻き込むわけにはいかない。
「カズミ、帰るで」
「けど、大悟ひとりやったら心配や!?」
ミカは大悟の気持ちを悟ってくれた。尚も踏みとどまろうとする藤原に、こう言い放った。
「あんたはハナムラの人間やない。私らに出来ることはここまで。大悟君にはケイちゃんがついてるねんから、心配せんでええ」
藤原は不満そうだったが、ミカに引きずられるようにして、部屋を後にした。
彼らが居なくなると、大悟は通っている高校の生徒名簿を覗き見し、鳥居勝馬の現住所と家族構成を確認。その後、役所のデータベースから鳥居勝馬の情報を覗き見した。藤原が言っていたように、鳥居勝馬と鳥居圭介は、戸籍上は兄弟ではあるが、血の繋がりはなかった。籍を入れたのは勝馬が高校入学したタイミングである。
続いて、鳥居圭介の勤務先である大手新聞社のサイトにアクセスし、人事関係のデータベースを覗き見する。某大学を卒業後、入社。経済部から社会部へ異動となり、記者としての経験を積んでいるようだ。
当たり前だけど、虐待をにおわせる情報は全くないなぁ。
プライベートを探るべく、SNSの情報を辿ってみたが、ごくごく普通のものしか上がってこない。
やはり実力行使しかないのかとテーブルに突っ伏すと、まもなく睡魔が襲ってきた。ここで寝ちゃダメだと瞼を開けようとしたが、体は疲れているようでそのまま眠ってしまった。
「あーあ、こんなところで寝ちゃって」
Kの声が聞こえたと思ってまもなく、大悟の体はふわりと抱き上げられた。
「おかえり、K」
目を開けようとしたが、眠くて仕方なくて、声だけを発する。
「ただいま。晩ご飯どうする? 眠いなら寝てていいよ」
「ううん、食べる」
大悟はぎゅっとKに抱きついた。言葉と行動が伴っていないことはわかっていたが、今はこうしていたい。
「食事より寝るのが先かな?」
「食べる、お腹空いたし」
嘘ではない。ミカのミートボールと食パンを焼いて食べたきりなので、空腹ではあるのだが、とにかく眠い。
「そっかそっか。じゃあ、デリバリーでも頼むか」
そう言いながら、Kは大悟の髪を優しく撫でてくれる。全身で彼の体温を感じて、頭を撫でられて、大悟は幸せを感じた。
「ありがとう、K」
「え、急にどうした?」
「俺の側にいてくれて、こうして甘やかしてくれて、ありがとう」
「どういたしまして。俺の方こそ、毎回がっついてごめんね」
その言葉でぱちりと目を開ければ、苦笑いをしたKの顔が飛び込んできた。
「そうだよ、もうちょっと抑えてよ!?」
「ごめん、ごめん。ようやく目開いたね」
降りると主張して、大悟は床に両足をつけ、まっすぐKを見つめた。
「藤原には言わないし、これ以上関わらせるつもりもない。だからK、本当のこと教えて」
Kは問いかけをはぐらかすように、キスをしようとしたが、大悟はそれを制した。
「瀬野はボスと関わりがあるんじゃないの? 今日になって連絡があって、自分は無関係だと主張し、鳥居のお兄さんの命を差し出した。違う?」
現状から考えた大悟の私見である。既にKはレイと協議を済ませており、自分や藤原に関わらせないようにと釘を刺しているはずだ。
「全くもう、ハニーはなんでそんなに優秀なのかな」
Kは大悟を子供のように抱え上げた。背中をポンポンと叩いて、やれやれと呟き、こう言った。
「答えはイエス。ハナムラの情報屋としては合格なんだけど、ハニーがだんだん俺から離れていくようで嫌だなぁ」
「どうして?」
Kが放った言葉が理解出来ず、大悟は不安になった。
「俺の本音はね、ここまできても尚、ハニーを裏の仕事に関わらせたくないの。勿論、今更無理なことはわかってる。だからせめて高校生でいる間はって思ってた」
普通の生活をさせたいと願うKの気持ちは、とても有り難かった。有り難かったけれど、それは違うと大悟は思った。
「大事なことを忘れてるよ、K。高校生の俺は、ハナムラの情報屋であるカナリアが作った複製品、レプリカだよ」
両親を殺した犯人は誰か、日向が自分をどう扱ったのか、それを世間に告発した時点で江藤大悟は死んだ。自分はハナムラという裏社会の人間となり、カナリアになった。
「それにさ、俺はKの仕事を知ってる。どんな理由があろうとも、決して許されないことをしてるって理解してる。それでも大好きだし、側にいる。とっくに同罪だよ」
この気持ちが伝わるように、大悟はKに強くしがみついた。
「表向きは確かに高校生だけど、俺もKと同じだから」
Kは大悟に言った。自分には何十、いや何百という人間の血と怨念が取り憑いていると。Kが過去にどのような過ちを犯してきたのか知らない。けれど、大悟は彼の全てを愛すると決めた。
「だから、絶対離れたりなんかしないよ!」
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