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第42話
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「おはよ、ハニー」
毎度の如く、朝目覚めるとKの笑顔がすぐ側にある。
「おはよ、K。今何時?」
「午前八時だよ。朝ご飯、何にする?」
「食パンあったよね? それでいいよ」
むくりと起き上がれば、Kがすぐにキスをくれる。幸せないつもの朝、ただひとつ違っているのは、Kが既に服を着ていることか。
「草薙さん、もう出掛けたの?」
怪我をした草薙がKと大悟が暮らす部屋に転がり込んできて、三日が過ぎた。初日は空き部屋にいてもらったのだが、往診に来た松田から、目に見える場所に置いてやってほしいとお願いされたため、二日目からはリビングのソファーで寝てもらっている。本当に寝ているのかは、微妙なところではあるが。
「うん。食パンは草薙に食わせたから、今日は外で食べよ。体は大丈夫?」
草薙は、本来入院治療すべき状態であるため、警視庁までの送り迎えをKがすることになった。そんなわけで、彼はいつも以上に早起きなのである。
「俺は大丈夫。Kこそちゃんと寝てる?」
寝てるよと言ってKは笑い、まだ寝ぼけている大悟を抱き上げる。今日はKのシャツも着ておらず、下着もつけていなかった。
「ハニーの肌は、すべすべで気持ちいいなぁ」
耳元で囁いて、チュッと頬にキスをする。思わずドキリとしてしまい、大悟は慌てた。
「ふ、服着るから下ろして!?」
このままではまた変な気持ちになってしまう。大悟は拘束を逃れようと暴れた。
「褒めてるんだけどな。昨夜は俺が欲しいって、あんなに縋ったのにね」
それを言われると何も言えなくなる。しかも、意識が無くなる程抱かれても、翌日はすっかり元気になっている。大悟もKに毒されてしまい、不健康極まりない日常を送るようになっていた。
「素直なハニーも、意地っ張りなハニーも、両方好きだよ。出掛ける準備しよっか」
Kは大悟を下ろし、用意してあった着替えを手渡して笑った。
身支度を整えて部屋を出る。エレベーターに乗って地下駐車場に向かい、車に乗る。仕事用の車に乗ったことからして、どうやら朝食だけでは終わらないらしい。
「そんなに緊張しなくても、レイと会うだけだよ」
一般道を走り出してまもなく、運転席のKが言った。ブランド物と思しきジャケットに黒のTシャツ、ジーンズ、薄いブルーのサングラス姿。いつものことだが、見惚れるくらいカッコいい。
「レイと? それって仕事の話?」
大悟は普段着に等しいパーカーとコットンパンツ。外で食事ということもあってか、レイが作ってくれた傷痕を隠す肌色のシートを貼った。
「俺は反対なんだけどね、ハニーをひとりで学校に行かせるのは」
藤原と共に学校へ行きたいと訴えた大悟だったが、鳥居勝馬はしばらく松田の診療所に滞在することになり、藤原もそれに付き添うことになり、学校を休んでいる。大悟ひとりでは難しいだろうと思っていた。
「学校、行っていいの?」
「詳しいことはレイの話を聞いてからね。あいつが来るのは一時間後だから、ゆっくり食べようね」
Kに連れられてやってきたのは、都内にある高級ホテルだった。自宅待機になる直前、ランチを食べた場所で、Kとの初デートの場所でもあった。
受付で名前を言えば、以前と同じ個室に通された。今回も窓際の特等席で、都心のビル群が見渡せた。四人掛けのテーブル席に案内されて大悟が座ると、Kは向かいではなく左側に座った。
「後でもうひとり来るんだ。あ、朝食は二人分でいいよ、アメリカンブレックファストね」
かしこまりましたと言い、ウエイターは一礼して去っていく。
「食パンでいいって言ってたから洋食にしたけど、よかったかな?」
こくりと頷く大悟。こういう場所に来ると、Kが一段と大人に見えて不安になる。気持ちを悟ってのことだろう、Kは蕩けるような笑顔で大悟の頭を撫でた。左耳に顔を近づけ、こんな言葉を囁く。
「昨日いっぱい運動したから、たくさん食べないとね」
そして、大悟の唇にチュッとキスをする。
「ちょっと、ここ、外!?」
「俺達以外いないじゃん。食べさせてあげよっか?」
「いい、自分で食べられるから!」
「えー、残念」
こんなところは子供っぽくてドキドキする。カッコいいだけじゃなく、こうして甘えてくるKが愛おしい。
そうこうするうちに、食事が運ばれてきた。テーブル狭しと並べられたのはオムレツやサラダ、ローストビーフ、肉厚なベーコン、キッシュ、フルーツ、ヨーグルト、焼きたてのクロワッサン等々。どれも美味しそうで、大悟は目を輝かせた。
いただきますと手を合わせ、まずはクロワッサンを口にする。バターたっぷりの優しい味わいに、自然と顔が綻ぶ。
「美味しい?」
「うん、すごく美味しい!」
たまにはこんな朝食も悪くない。Kと話しながら、テーブルに置かれたメニューを片づけ、食後のコーヒーが運ばれてきたとき、見計らったかのようにレイがやってきた。
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