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第48話
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サユリが居なくなり、高校の化学準備室でKとふたりになる。彼はすぐさま大悟にキスしようとしたが、両手を口で覆って拒否した。
「え、なんで?」
「なんでじゃない、学校だよ!?」
うんうんと頷き、Kは左頬にチュッとキスした。
「学校で制服だと、ハニーは一段とエロいな」
これ、絶対キスだけじゃ終わんないよ!?
サユリは一限の授業が終わるまでと言っていたので、そんなに時間はないのである。
「てゆーか、よく入れたね」
「門扉ひょいって飛び越えて、警備員にはハナムラグループの人間だって言ったら、すんなり入れてくれたよ」
「それ、強行突破じゃないの!?」
状況からして、すんなりなわけがない。大悟は唖然とした。
「いいじゃん、いいじゃん。サユリの魔の手から救って上げられたんだし」
「いや、ここ、学校だから!」
サユリに迫られ、恐怖を感じたけれど、彼女もハナムラの人間である。こんな人目のあるところで、大悟をどうこうするわけがない。
「もう、連れないなぁ、ハニーは」
そう言うと、Kは大悟を優しく抱きしめ、よしよしと頭を撫でる。
「今日は無理だけど、明日学校終わったらボスが会うって。サユリがハニーの担任になったから、代わりをレイがやるんだって」
サユリは花村の秘書的な仕事をしていると言っていた。彼女が高校教師となった以上、その代わりを誰かがやらねばならない。
「レイ、大丈夫かな」
代役として適任なのはレイしかいない。彼のオーバーワークを心配する大悟だったが、Kは不機嫌になって、知らねと言うだけだった。
「そうそう、前みたいに学校終わったら会社に来て、仕事手伝ってって言ってたよ」
Kは体を離し、またもや大悟にキスをしようとしたが、素早く口に手を当ててブロックする。
「いいじゃん、チューぐらい」
「ダーメ! 連絡事項はそれで終わり?」
「うん」
「じゃあ、帰っていいよ」
「えー、まだ時間あるし」
「時間あるうちに帰ろうよ。レイがボスに就くなら、責任者不在になるよね? この場合、仕事云々はともかく、Kは日中会社にいるべきだと思うけど」
レイいわく、通常の仕事に関わることはほとんど無いが、電話対応等も稀にあるという話だった。社内の人間達は口を揃えて、Kやレイがいる安心感は大きいと言っていた。以上のことから、マキと遊んでいるだけとしても、Kという存在は必要になるはずだ。
「へー、ハニーもレイと同じこと言うんだ」
Kは明らかに機嫌を害し、纏う空気まで変わった。
「それは、前にレイがそう言ってたから」
「はいはい、わかりました。帰ればいいんでしょ、か・え・れ・ば!」
大悟の言葉を遮ってKが言った。機嫌を害した上につむじまで曲げてしまった。余程気に入らないのか、まるで子供のようである。
「あ、うん、気をつけて帰ってね。また後で」
思うところはあるが、それでも来てくれたことは嬉しかった。ここは笑顔で見送ろうとした大悟だったが……
「今日はマキに来させるから」
ぷいと顔を背け、Kは言った。
「ハニーは俺に会社にいてほしいんだろ」
「いや、だから、それは……!?」
「じゃあ、そういうことで」
つむじを曲げたまま、Kは化学準備室を出て行った。ひとり残された大悟は、一限終了のチャイムが鳴るまで呆然としていた。
「ふーん、そういうことかぁ」
午後の授業が終わり、校門を出るとマキがいた。Kから大悟を迎えに行けと脅されて出てきたそうだ。車内で大悟が今までの経緯を説明すると、納得したらしいマキは車を走らせながら、ケラケラと笑った。
「Kはまだ怒ってるの?」
「社内の空気が険悪でさぁ、皆ビクビクしてるよ」
「どうしよう、迷惑かけてるよね」
どうすればKの機嫌が良くなるのか。素っ気ない態度になったのは確かだが、学校で流されるわけにはいかない。あの対応がベストだと大悟は思っている。
「カナカナが絡むと、サカさん、感情豊かになるからねぇ」
「感情豊かって」
「昔から僕には優しかったけど、どこか冷めてたんだよね。仕事が仕事だし、相当の修羅場を潜り抜けてきたわけじゃない? けど、カナカナと出会ってからのサカさんは、人間らしくなったと思う」
いくつか聞いたKの過去は、どれも凄まじいものだった。それを乗り越えての今なのだから、Kは本当に凄いと大悟は思っている。
「僕は今のサカさんが好きだよ。勿論人としてだから安心してね。戸籍のない僕達は、この世の亡霊ではあるけれど、ちゃんと生きてる。生きてる限りはさぁ、少しくらい、羽目外したっていいと思うんだよね」
マキの言葉は、大悟の胸の真ん中を貫いた。
「始末屋のリーダーとしてはダメダメかもだけど、カナカナ激ラブのサカさん、とっても楽しそうなんだもん」
サユリに迫られているのを聞いて、飛んできてくれた。学校にも関わらず、キスをしようとしてきた。Kの愛情はストレートで濃密だが、どれも大悟への想いを形にしたものである。
「どうしたら、Kは機嫌直してくれるのかな?」
「カナカナからチューすればいいんじゃないの」
「そんなのでいいの!?」
「男なんて単純だからさぁ」
そうこうするうちに、車はハナムラコーポレーションに到着した。
「カナリアさん、待ってましたよ!」
「シラサカさんをなんとかしてください!」
「じゃないと、俺達、バラされます!?」
会社に足を踏み入れると、社員達が集まってきた。マキが言うように、彼らは悲壮な顔つきをしていた。
「ほーらね。カナカナがなんとかしないと、サカさん、どんどんダメになっちゃうよぉ」
自席で仏頂面のKは、真っ黒なパソコン画面を睨みつけており、大悟の気配をわかっているはずなのに、こちらを見ようとしない。こっそりキスしようと思っていたが、これはもう一刻の猶予もない。
意を決して大悟はKに近づき、肩を叩いた。彼が振り向いた瞬間、唇に触れる。突然のことに驚いたようで、Kは目を丸くした。
「ごめんね、K、これで許して」
そう言って、もう一度唇に触れれば、Kは強引に大悟の口内をこじ開け、掻き回した。
「っ……ん、んん、ッ……!?」
ここが会社だとか、人が見ているとか、そんなことは全部忘れた。Kとのキスは麻薬だ。もっとしたい、もっと触れ合いたいと感じさせてくれるから。
「うん、許す。続きは夜にね」
上機嫌になったKは、いつものように大悟にまとわりついた。それを見て、社内の人間達はようやく胸を撫で下ろしたのだった。
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