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第52話(R)
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Kから連絡を受け、大悟は地下駐車場に向かった。仕事用の車の前にいた彼を見つけ、急いで駆け寄る。
「ごめん、待った?」
「全然。待たせたのはこっちの方だし。じゃあ、車に乗って」
「どこへ行くの?」
「んーとね、お泊まりデート」
着ていた服が変わっていたことに不安を覚える。車に乗り込むと、すぐにKがキスをくれた。こうして彼に触れると安心出来るから不思議である。
「仕事はしてないよ。ちょっと汚れたから着替えただけ。ハニーの着替えも準備してあるからね」
大悟の気持ちを悟って、Kが言った。ちなみに、ハナムラコーポレーションで仕事をするときは、会社で制服から私服に着替える。鞄と制服は車の中に置いたままなので、明日は出先から学校に行くことになりそうだ。
「草薙さん、無事なの?」
名前を出していいものかと思ったが、気になったので聞いてみる。
「変わらず行方不明だけど、そう簡単にくたばる奴じゃないからさ」
Kは笑って大悟の頭を撫でる。
「それじゃあ、出発進行!」
終始ご機嫌なKに連れられてやってきたのは、彼との初デートの場所であり、先日朝食を取り、レイと会った高級ホテルだった。フロントに顔を出せば、支配人らしき男がすぐさまやってきて、Kにカードを差し出した。
「突然ですまないね」
「お部屋はシラサカ様のものですから、お気になさらず。お食事はどういたしますか?」
「今夜の分はあるから、明日の朝食を二人分予約しといて。下に食べに行くから」
Kは着替えが入った荷物を、大悟はミカから渡された二人分のお弁当がそれぞれ手にしている。
「かしこまりました。御用がございましたら、なんなりと申しつけくださいませ」
エレベーターまで見送られた後、扉が閉まってすぐ大悟は訊ねる。
「ねえ、Kのものって?」
「ここのスイートを一室借り切ってんの。自宅に帰るのが面倒なときとか、よく泊まってたから」
つきあっていた女性とはここで会っていたということだ。過去の事だとわかっていても、内心嫉妬してしまう大悟であった。
「プライベートだけじゃなく、仕事でクライアントに会ったりもしてるよ」
背後から優しく抱きしめられ、左頬にチュッとキスをする。
「ちょっと、まだ外!?」
「妬いてくれたの、嬉しいんだもーん」
やがてエレベーターは最上階へと辿り着く。扉が開くと勝手知ったるで、Kは右手で大悟を抱き上げ、右方向へと進む。
「だから、まだ外!?」
「大丈夫、大丈夫。あの奥の部屋ね」
受け取ったカードを差し込み、扉を押して中に足を踏み入れる。カナダで泊まったあの部屋を思わせる広いスイートだった。
Kに下ろしてと訴えて、大悟は大きな窓に駆け寄った。カーテンを開けようとしたけれど、開かない。するとカチッという音がして、ゆっくりとカーテンが開く。都内のネオンサインが一望出来た。
「気に入ってくれた?」
「うん! カナダで泊まったホテルみたい!」
「思い出すなぁ、ハニーとの初夜」
Kはその場で腕組みをして、うんうんと頷いた。
「Kはおろおろしてたよね。藤原に聞いたよ」
「俺の顔見て勃ったって、ハニー言ってたよ」
それぞれ言い合った後、顔を見合わせて笑う。あのときがあったから今がある。あれからずっと、Kは大悟を大切にしてくれている。
「お腹空いてない? ミカちゃんさんのお弁当食べよ」
藤原の家を出るときに持たされた二人分のお弁当。おかずは勿論ハンバーグがメインである。
「ミカちゃんのハンバーグも悪くないけど、俺はハニーを食べたいなぁ」
「それは後で。お腹空いたから」
照れもせずに言い切るKに、大悟はぴしゃりと言い放つ。テーブルにお弁当箱と割り箸を置き、お茶を用意しようとポットに水を入れにバスルームへ向かう。ブラインドが閉められているが、開ければ夜景が見えそうだった。
こんな部屋を借りられるなんて、Kは凄いな。
蛇口を捻って水を出し、半分まで入れて止める。ポットを置いてから、鏡で自分の顔を見やる。高校生で未成年の大悟と、社会人で大人なK。改めて立場の違いを見せつけられた。自分には何もない。いつもKに護ってもらってばかり。追いつきたくても追いつけない、大悟とKの間には決定的な壁があるから。
「やっぱり、ハニーを食べるのが先だね」
はっとして顔を上げれば、鏡にKの姿が目に入る。振り向こうとしたら、背後から強く抱きしめられた。
「俺と一緒にいるのに、なんで悲しそうな顔するの?」
心を見透かされ、恥ずかしくなって顔を背ければ、強引に前を向かされ、鏡越しにKと見つめ合う形になる。
「Kは凄いなって、俺には何もないなって」
「俺からすれば、ハニーの方が凄いけど?」
「だって、Kに護ってもらってばかりだし、レイはとにかく凄いし!?」
藤原の家に行くように言われたこと、Kが服を着替えていたことからして、おそらく自宅には死体があったのだろう。一緒だった藤堂という刑事の姿も無かったことからして、レイが色々立ち回ってくれたのだろう。
「情報屋のカテゴリーに、始末屋の俺が口出すのは違うけど、ここはハナムラの人間として言わせてもらう。レイを目標にすることはやめた方がいいよ」
Kが放った言葉に、大悟は大きなショックを受けた。
「レイは天才だ。強さとしなやかさも兼ね備えている。ハナムラのブレーンと呼ばれるだけのことはある。俺ですら、あいつには敵わないって思っている」
でもねと言って、Kは大悟をくるりと回転させる。鏡越しではなく、真正面から向き合い、そっと唇に触れる。
「俺が愛してるのはハニーだけ。始末屋の俺が全てを捧げるのは、カナリアだけ」
真剣な顔で言い放たれ、胸の奥がかっと熱くなる。大悟はKの唇に触れ、口内をこじ開けた。それだけでは止まらず、激しく舌を絡め合う。その間に服を捲り上げられ、あっという間に下半身を晒された。
「確かに部屋に死体はあった、いや、出来たというべきかな。一部の部屋が荒らされてたから、掃除を頼んだ。でもね、それは始末屋と掃除屋の領域。レイだから口を挟むだけで、本当は情報屋の領域外だよ」
仕事の話はこれでおしまい、そう言ってKは大悟の耳を甘噛みし、舌をねじ込んで、掻き回してきた。
「あっ、ん、そこ、ん、ああっ………ッ!?」
同時に膨れ上がったペニスを揉まれ、全身が快楽を求める。
「俺に欲情して、こんなんなってくれるハニーが好き。俺の寝首を掻けるのは、ハニーしかいないんだから」
「ん、あっ、や、も、でる……ッ!?」
我慢なんて出来るわけもなく、Kの手の中に白濁を吐き出せば、すぐさま体を反転させられ、大悟の蕾にKの指がつぷりと侵入する。それだけで全身がぞくりと震えた。
「今日のハニー、いつもよりエロい」
耳元で囁くKの声に、体がびくんと反応する。彼が欲しい、早く欲しいと求めるように。
「早く、Kが、ほし………ッ、ん、んッ……!?」
何度となくKを受け入れてきたため、少し慣らせばすぐに広がる。このまま入れるねと囁いて、熱く滾ったKのペニスが侵入してくる。
「自分の顔、見て、ハニー」
顎に手をかけられ、前を向かされる。鏡越しに、熱に浮かされたKと目が合う。
「俺の咥えて、こんなに感じてるんだよ」
行為の最中に、自分の顔を見ることなんて無かっただけに、恥ずかしさと快感が入り混じった気持ちがくすぐったい。
「や、だ、Kの、変、態……ッ!?」
「ふふ、俺、ハニー限定の変態だから、ね……ッ!?」
背後から激しく突かれることすら心地良い。甘い痺れと幸せに酔いしれる。
「ん、あっ、K、好きぃ、アアッ、だい、すきぃ!?」
籠の中で果てるはずだった自分を夜空に放ってくれた。セックスの恐怖から解き放ってくれた。Kがいたから、大悟は今、生きているのだ。
「や、あ、ああっ……ん……や、ぁあっ、ああっ!?」
愛する人がいれば、地獄に落ちたっていい。何より大悟はもう、Kと同じ闇の世界の住人だ。
「ヤバ、もたね! 出すよ、ハニー、中に、ん、ッ、っ!?」
体の中にKを取り込み、大悟自身も白濁を吐き出した。後で掻き出すことになるけれど、彼に追いつけたようで嬉しくなる。
「もう一回、いい?」
Kが出て行ってまもなく抱き上げられ、そのままベッドルームへと向かう。
もっと繋がっていたい。そうすれば、Kに近づける気がする。
「うん。もっともっと、Kが欲しい……」
青い空なんて知らなくていい。闇の中にあるたったひとつの温もり、Kという名の光の中で、カナリアは生きるから。
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