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第63話
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(近づいてるんだよ、俺もKと同じ血と闇の中で生きる人間になるために)
シラサカにとって大悟は特別だ。血にまみれた自分を受け入れ、愛してくれる唯一の存在だ。だからこそ、彼を自分のようにしたくないし、危険から遠ざけたいのである。
「何かあってもKが護ってくれるじゃん。俺はKを信じてるよ」
そう言って、大悟はシラサカの両頬に両手を伸ばす。彼の温もりが毛羽立った気持ちを落ち着かせてくれた。
「ハニーは俺の天使だね」
深い闇にいるはずのシラサカに、眩しい程の光が満ちる。愛する人がくれる優しさに胸が熱くなる。
年のせいかな、ハニーといると時々泣きそうになるや。
死神がくれた贈り物は全てをかけて護るべき相手。大悟のためなら、シラサカは死んでもいいとすら思っている。
『悪いが続きは後にしてくれ。俺が許可したとはいえ、最終判断はおまえにある。カナリアを連れて行くか否か、今すぐ決めろ』
レイが苛立ち、声を荒げる。そこでシラサカは覚悟を決めた。
「オーケー。ハニーを連れていく。和臣はいつ来る予定だ?」
『一時間以内という話だったから、おまえらがこっちに来る方が早いだろ。駐車場にマキを行かせるから、プレゼントを受け取れよ』
要するに、マキに弾丸のストックを預けるということらしい。
「使わねえとは思うが、一応もらっとくよ」
会社の地下駐車場に辿り着くと、既にマキがいた。シラサカは車を降りると、トランクを開け、黒いロングコートを羽織った。
「はい、レイからのプレゼント」
そう言うと、マキは弾丸のストックをコートの左ポケットに突っ込んだ。車内のダッシュボードから持ち出した愛用の拳銃は、既にジーンズの後ろポケットに突っ込んである。
「カナカナもついていくんだよね。だったらこれ、僕からのプレゼント」
マキはそっと大悟のパーカーのポケットにあるものを突っ込んだ。
「え、でも、これ!?」
大悟は慌てた。彼が差し出したのは、本物の拳銃だったから。
「お守りだよ。弾は一発だけ入れてる。いいよね、サカさん、持つぐらいは」
マキもレイと同じように、大悟をハナムラの人間と見ている。だからこそ、こうして拳銃を預けるのだ。
「どうせレイの入れ知恵だろ。好きにしろよ」
「そういうわけだから、万が一使う、もしくは握ることになったら、前に教えたことを絶対守ってね」
「わかった。これ、預かるね」
大悟は真剣な顔つきで言った。
「そんなに緊張しなくても、サカさんいるんだから大丈夫だって」
マキは大悟の頭を撫でようとしたが、シラサカがいることを気にしてか、空中で撫でるに留めた。
マキに見送られ、シラサカは大悟と共に社長室直通のエレベーターに乗り込む。扉が閉まると同時に、大悟を抱き寄せ、唇を合わせた。
「ちょ、K……ッ……んッ!?」
舌でこじ開け、口内に入り込み、大悟の舌と絡め合う。上昇するエレベーターの中で、唾液をそそぎ入れ、強く抱きしめながら、求め合う。目を開けて表示を確認すれば、もう少しで到着だった。
「もう、Kの、バカ……」
透明の糸がぷつりと切れた後、大悟は潤んだ瞳で呟く。シラサカは下半身の疼きを堪えて、彼の額にチュッとキスをする。
「昼からずっと我慢してたんだよ。今夜は寝かせないからね」
和臣が何のためにやってくるのかはわからない。終われば大悟を抱けるという気持ちで乗り切るしかないだろう。
そうこうするうちに、エレベーターが社長室に到着した。扉が開いた瞬間、シラサカと大悟は衝撃的な光景を目にする。
サユリが花村と濃厚なキスをしているのだ。シラサカと大悟は唖然とした後、目のやり場に困り、あちこちに視線を巡らせた。それでも気づかれないため、シラサカはわざとらしい咳払いをした。
「あら、あなた達、来たのね」
なんでもないように言って、サユリは花村から離れる。
「それにしても、黄色い小鳥君が一緒とはね」
サユリは、大悟を頭の先からつま先まで観察し、朗らかな笑顔を見せた。
「今日は学校お休みしたんじゃなかったかしら? 体調不良のわりにはとても元気そうね」
「あ、その、ごめんなさい!」
焦ったあげく、大悟は素直に謝った。
「素直なのはいいことだけど、これから来る客には、決して隙を見せてはならないわよ」
ハナムラの人間特有の空気を放ちながら、サユリは言った。ちなみに、この後やってくる客=和臣のことである。
「レイがどこまで手を打ってくれるかで、私の立ち位置も変わるわね」
「レイのことだから、先を読んで色々仕掛けてくるだろう」
「そうね、そうであってほしいわ」
サユリと花村は真剣な顔でやり取りするが、その内容は全く理解出来ない。
「私はおまえを責めはしない。好きにするといい」
「ふふ。あなたのそういうところ、大好きよ、ケン」
そう言うと、ふたりはまた濃密なキスをした。
俺らがいることわかってやってんのか、これ。
シラサカは呆れた。大悟は目のやり場に困って、おろおろしている。なんなら自分達もと思ったが、大悟のエロい姿を見せたくなくて、我慢することにした。
やがて小さなアラーム音が鳴った。それを合図にサユリは花村から離れ、アイコンタクトを取った後、エレベーターへ乗り込み、階下へと向かう。
「サユリが言ったように、君がついてくるのは予想外だったよ」
花村は大悟に視線を向け、苦笑した。
「すみません、俺がわがままを言ったもので」
「かまわないよ。死神となって忌み嫌われても、悪に手を染めても、我々は世界を変える。それを君にも見届けてほしい」
花村がそう言い終えてまもなく、サユリが白髪の男を伴って、現れた。
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