アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
二章 9
-
窓から差す白い月明かりが、二人の天使と悪魔を照らす。
ニコライは腕を背中側で紐で縛られ、騎乗位での性交をミハイルにさせられていた。
「そう、そのまま腰を下ろして」
「や、ううっ……もう、無理ですっ……!」
首を横に降るニコライの陰茎は勃起していない。苦痛しか感じていないのだ。
その白い躰のあちこちに切り傷があった。紅い傷口から垂れた血液の幾らかは雫となってミハイルの躰に落ちる。
彼を上に跨らせているミハイルは、彼の腰に手をやった。
「それじゃあ、こうしようか?」
「え、あっ……ああっ! うぁあっ!」
ミハイルがニコライの中に性器を入れたまま正常位に体勢を変えた。
ベッドに寝かせられたニコライは涙の溜まった目でミハイルを見上げる。
ミハイルの片手に握られているナイフ。それはニコライが彼を刺そうとした戦闘用のもので、今は彼がニコライを傷付けているナイフだ。
ニコライを凌辱しながらナイフで切りつけるミハイル。
「君はこれで俺を殺そうとした。無駄なのにね」
「あっ、う……」
ニコライの腹部に刃を立てる。刃を滑らせたところから血が溢れる。
「ぐっ……!」
「切る度に締め付けて、堪らないね」
溢れた血を、ミハイルの舌が舐め取る。
「美味しい……。もっと、傷つけたくなるよ、コーリャ」
今度は刃が腕に当て行われた。
「ねえ、ミーシャって呼んでよ。俺のこと」
「……誰が、そんなこと……! あ、ああ!」
一際深く刃が腕を切りつけ、血液が溢れだす。同時にミハイルはニコライの奥を突き上げた。
痛みに悶絶するニコライ。彼に強く性器を締め付けられたミハイルも僅かに顔を歪める。
「くっ……! 凄いね、コーリャ。堪らなく気持ちいいよ」
「ううっ……く、ああ……」
美女桜色の双眸から涙を流すニコライ。今まで自分が使ってきたナイフの刃が冷たい。それが皮膚に触れるたびに痛みの箇所は増えていく。
裸の躰も冷えていくように感じられ、ミハイルとの接合部だけが矢鱈に熱く思える。暫くオーガズムに達しておらず、勃起状態のままのミハイルの陰茎はニコライの中で固く熱を持っている。何故彼はこのようなことをして勃起していられるのか、ニコライにはその神経が理解できない。
天使の長い銀髪を、ミハイルは片手で撫でた。
「愛しているよ、コーリャ。犯し続けて、俺がいない生活なんて忘れさせてやりたい……」
ナイフがニコライの掌に浅い傷を生み出し、同時にミハイルの陰茎が彼の中を突いた。
「うぁっ…………もう、殺してください……、今すぐに」
「そのお願い事は、聞けないかな」
残酷なミハイルの言動。
一度溢れだした涙を止めることができなくなるニコライ。昼間は何もされなかったが、夕方になってから悪魔の暴行は始まった。もう幾度目になるかわからない性交。悪魔に犯され、傷つけられ、今はその存在しか感じられず、世界に二人きりかのようだ。このまま傷つけられてこの悪魔に殺されてしまえばどんなに楽だろう。
「私に……生きる意味なんてない」
一言、ニコライがそう言うと、ミハイルが僅かに驚いた顔をした。そして彼は、ニコライを米袋か何かのようにひっくり返した。
白く広い背中。その肩甲骨の辺りにある一対の赤く長細い痣――翼痕(よくこん)。天使が大昔、そこに白い翼を持っていた証。
悪魔はニコライの翼痕に手を這わせ、彼の耳元に口を近づける。
「天使って言うのは、理解できないよ。天使が悪魔を理解できないのと同じでね」
ナイフが、ニコライの肩の辺りを滑る。
「く……うっ!」
「どうして天使は人間界の悪魔を殺したがるんだろうね? 今は停戦中なのに、何のために殺すんだろう」
傷口を舐めるミハイルの舌。その味を楽しんでいるかのようだ。
「何で天使と悪魔は戦争なんてするんだろう、ね? 同じ翼を失った者同士……戦ってなきゃいられないのかな? 平和はいつも壊される」
「争いは……なくならない……」
「え?」
「天使と悪魔は似ていますが、違うんです……。理解できないんです。だから戦う」
先程つけた傷の上を、再び刃が滑った。ニコライの中をミハイルが動く。
「ううっ! ……わからない、怖い、気持ち悪いと……、あ、くうっ…………戦ってはたくさん殺され、恨みが募り、また戦うのです……」
「お互いが理解できれば、戦いはなくなるのかな。悲しみの連鎖は、なくなる?」
「……そんな日が来るとは思えません、うあっ! 嫌、もう止めてください……!」
苦痛に歪められるニコライの表情。ミハイルは彼の顔を自分の方に向けさせ、その唇に接吻した。
「俺は君に暗示をかける」
ミハイルの白い手が、ニコライの顔の輪郭をなぞる。
「君は明日になったら俺の顔を忘れるよ」
そしてもう一度唇を重ね、ニコライとしっかり目を合わせる。
「でもね、またこの両目を見たら、君は俺の顔を思い出すんだ」
狂気と無邪気さをあわせ持つ若菜色の瞳。それはあまりにも美しく、それでいて恐ろしい。
「俺を満足させたら、眠るんだ。コーリャ……」
「うっ、んああっ……! 痛っ、嫌ぁ……うあぁっ!」
狂気に満ちた長い夜は、まだ続いた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
14 / 70