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「よいみ…っ。痛いんだけど。」
互いの熱が、指先からじんわりと伝わってくる。じっとりと汗ばんでいるのは、宵宮の方か相手の方か。
「…お願いっ!!」
口角から唾を飛ばさん勢いで、宵宮は一心に乞うた。
「僕の仕事、手伝ってくれないか!!」
「…。」
ややしてから、朝倉はふっと微笑んで、やれやれと肩を竦めてみせた。
「仕方ねぇな~。…いいよ。」
「…っ。ありがとう、朝倉!!一生、恩に着る!!今ならお前の言うこと何でも聞くぞ!!」
「え??」
途端に目を丸くする朝倉だった。しかし、すぐにいつものポーカーフェイスに戻ってしまう。
「…いや、遠慮する。ウサギにして欲しいことなんて一つもないし。」
「はァァァ~!?」
不機嫌な声を上げると、朝倉が吹き出す。…釣られて、宵宮も笑い出す。二人の笑い声が、静寂に包まれ、強張っていたオフィスの空気を和やかにするようだった。
「…アブねぇ、アブねぇ。」
「ん??何だ、“おねだりする僕の趣味嗜好が危ない”って言うのか!?無理矢理やらせたの、お前だろ!!」
「いや、そうじゃねぇ~し。」
…ぷいと視線をそらした朝倉の頬がほのかに赤く染まって見えたのは、同僚の気のせいだろうか。
…高性能の助っ人が来たからと言って、たったそれだけで事態が解決するわけでは断じてない。結局、資料の修正が落ち着いたのは、午後十一時前だった。井山課長の席に書類を提出して、自身のデスクに帰ってきた宵宮は、正真正銘今度こそ帰宅するために周辺の後片付けを始める。
「無事に終わってよかったな。んじゃ、オレはお先に…。」
先に自分のデスクに戻っていた朝倉は、薄っぺらいカバンを手に同僚に背を向け、出入口に向かおうとする。咄嗟に、宵宮は相手を呼び止めた。
「ま…っ、待てよ、朝倉!!」
かなりの時間を要してしまったとはいえ、ここまで短時間に修正を終えられたのは、朝倉の有能さあってのことだ。無償で手伝わせてしまうなんて、申し訳ない。自販機で飲み物でも奢らねば借りを作ったとこちらも悶々としてしまうだろう。少し考えてから、宵宮は口を開く。
「い、一緒に帰ろう。」
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