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何だか自分から誘っているようで、あ、あ…っ、と宵宮はそわそわし始める。
「かッ、勘違いすんなよ!!せめて、会社の出入口までは送らせてくれ。…残業させちゃったお詫びとして、自販機でも何か奢りたいし…。」
「…あ~、わかった。」
朝倉も同僚の気持ちが読めたのだろう。しょうがないな、という体で待機の姿勢になった。宵宮は急いで帰り支度を終わらせようとして…デスクに置きっぱなしだった携帯に着信が入っているのに気がつく。確認してみると、いつの間にか千暁から八件くらい着信が残っていた。
(…やば。)
朝倉そっちのけで、すぐさま連絡した。数コールで千暁が出る。
『…もしもし。』
不機嫌そうな声。ほぼ反射的に宵宮は謝った。
「…あ、千暁。ごめん!!仕事集中していて、電話気づかなかった。本当、ごめん!!今日、大切な話があるって言っていたのに…。あとちょっと待っていて、今仕事終わって、すぐそっち…。」
『来なくていいよ。』
「え…??」
宵宮は呼吸が早くなっていくのを感じた。胸にどす黒く蜷局を巻く、嫌な予感。千暁の抑揚のない言葉。こちらを近寄らせないような、冷たい声色。
『大切な話って、俺らもう別れようって伝えたかっただけだから。』
宵宮は、自分の頭が一瞬にして真っ白になっていくのがわかった。
「・ ・ ・。」
制御を失った手から携帯が落ちていく。ごとん…、という重々しい音にようやく我に返る。なりふりかまわず乱暴に拾い上げ、むちゃくちゃな持ち方で携帯を耳元に持っていく。
「待って、千暁!!なんで…なんで、そんな急に…っ!!」
≪だって、お前早漏じゃん。楽しめないんだよ、セックスの時。≫
さぁっと顔が青ざめる。…が、それは残念ながらカレシの台詞にではなかった。携帯から漏れる声量が、やたらと大きく耳元に響いた気がしたのだ。ギギギ…と音がしそうなほどぎこちない動きで、宵宮は耳元から離した携帯の画面を確認する。
…スピーカーモードが、勝手にONになっていた。
さっき拾った時、無茶苦茶な掴み方をしたからだろうか。すすす…、と今度は携帯から顔を上げ、オフィスに残っていた天敵の様子を観察してみた。口を半開きにした朝倉の、滅多にお目にかかれないだろう驚愕の表情から、秒にして同僚は察した。
バレた。今の恋人の電話の声、フルオープンで二人きりのオフィスに響き渡っていた。
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