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“お預け”になった月曜日。出勤時、宵宮がエレベーター前で他の乗客五人ほどと次に来る便を待っていると、隣に並んだ者から腰を意味ありげに摩られる。驚いた宵宮は、もう少しで悲鳴をあげそうになった。口を開きかけた、矢先。
「…美月チャン、カラダ大丈夫??」
小首を傾げ、訊いてくる美形の男…の正体は、おなじみの朝倉だった。宵宮は、胸元に手をあて、ほっと息をつく。
「どこ触ってんだ。」
ほぼ同時に、腰にまきついた手を自身の腕で薙ぎ払うのも忘れない。
「ツレないな…。労わってやってんだろ??…っま、そういう素直じゃないところも、めちゃくちゃ魅力的だけどな。」
何やらニヤニヤ笑っている同僚に若干引いていると、二人の目の前で鉄扉が開く。宵宮は、獣の手をぐいっと引く。
「わけわかんないことブツクサ言ってないで、行くぞ。お前の所為でエレベーターに乗れないなんて嫌だからな。」
「…。」
じっと見つめてくる朝倉に、ウサギはくりくりした目を頻りに瞬きさせる。
「…な、何だよ。」
刹那。すっと上半身を屈めて、獣は獲物の耳元で揶揄する。
「…やだ。美月チャンったら、積極的。」
「茶化すな、エレベーターから追い出されてぇのか。」
お返しにギロッと睨んでやる宵宮だった。
宵宮にとって思わぬ出来事は、昼休憩に起こった。
…否、何も起きなかったと言い換えるべきか。
屋上には、宵宮一人しかいなかった。…そう。朝倉が、いつまで経っても来ないのだ。
宵宮はそわそわと食事を始めたが、時計の針が進むにつれ、顔色が悪くなっていく。
(…え。何で??朝、エレベーターで絡んだ時はいつも通りだったじゃん。)
(も、もしかして土曜の帰り際に引き留めたの、うぜぇって思われた??)
(いや、そもそも金曜の夜にイチャイチャし過ぎた??べたべたすんなっていやがられた??)
悶々とする宵宮をよそに、時計の針はあと五分進めば昼休憩終了のところまで辿り着いていた。
「僕…。」
俯き加減の宵宮の不安げな声が、屋上にぽつんと谺す。
「朝倉に、嫌われた??」
屋上は常に強い風が吹いている。宵宮のか細い声も、風に煽られて消えていく…はずだった。が。
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