アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
51
-
【前回のあらすじ】 朝倉と二人で、満員電車に乗りました。
「…何、コレ。」
「いいから。」
朝倉に促され、獲物は渋々マスクを身に着ける。ぎゅうぎゅうの満員電車内では、マスクをするのさえ骨が折れる。右は壁なので、腕に衝撃があっても自分が痛いだけだが、左腕を動かすだけであちこち人にぶつかってしまう。これだから、満員電車というのは厄介だ。
「寒いだろう??これを着るといい。」
肩に被せられたのは、灰色の上着だ。薄手だが、今は四月上旬で気温がある程度安定しており、上着が必要なほど寒くはない。
「いや…、そんな寒くないし。」
口ごもる獲物に対し、朝倉はいいからいいから、と上着の裾に腕を通し、前のファスナーを止める。
「前、見て。」
妙な点は多々あった。…さっきから、朝倉はずっと獲物の耳元で囁くように喋る。まるで、他人に訊かれたら困るかの如く。
渋々、宵宮が言われた通り前を向くとドアの窓に映った自身の顔が見えた。それから、お世辞にも鍛えているとは言いづらい上半身も。
「おい、朝倉。一体、何考えて…。」
「そろそろ乾いたかな。」
何が乾いたのか、宵宮は質問できなかった。…何故なら、口を開けた瞬間、朝倉だろう右手の親指が不用心に口腔に侵入してきたからだ。用意周到に、マスクの下から指を入れているため、周囲から見てもそこまでおかしくは映らないだろう。
「…っんぐ。」
心配しないで、と朝倉は続ける。
「除菌シートで拭いて、綺麗にしているよ。食事前にも使える奴。」
「…。」
そういう話じゃない、と言いたいところだが、今声を発そうものなら周りの人間が不審がってこちらを見てくるだろう。
宵宮は代わりに、『何をしろって言うんだ』と獣を睨みつける。獣は、実に愉快そうに微笑してみせた。
「…しゃぶって。アレするみたいに。」
「~っ」
唐突に卑猥な命令をされ、宵宮は言葉を失くす。
「…ほら。シてくれないなら、勝手に始めちゃうよ??」
朝倉は、ついさっきまで囁いていた左耳を甘く食む。
_
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
51 / 80