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朝倉に促されるまま、同期は椅子に戻るが…思考はもやもやとしたままだ。
(他に朝倉のことについて知っているのは…。男同士のHについて興味があったのと、男は僕が初めて…っぽいくらいか。)
何だ、と宵宮は肩を落とす。
(僕、朝倉のこと、片手で数えるぐらいしか知らないのか。)
目の前でペラペラと喋る朝倉は、時折笑みを零しながら、柔和な表情で相手を見つめてくる。
ああ、そうだ、と宵宮は勘づいてしまう。
『無事に終わってよかったな。んじゃ、オレはお先に…。』
『…オレも一緒だよ、美月チャン。すっごい緊張している。』
『…しょうがねぇな。手伝うよ。』
(朝倉は今までずっと、僕に気を遣ってくれていたんだ。)
すると突然、胸の奥がきゅうっと絞られるみたいに息が苦しくなった。目の前で楽しそうにする朝倉から…目が離せない。
(僕…。今まで気遣ってもらっていた分、朝倉に何か返せているのかな。御弁当とか、そういう物理的なお礼じゃなくて、もっと根っこの部分、心理的な面で…きちんと接していられただろうか。)
思えば、朝倉には何度も世話をやいてもらっている。千暁と別れた夜、柴田の飲みを断った夜、考えてみれば初めてのレッスンで緊張していた日も、相手なりに宵宮を安心させようとした結果だろう。
(どうしよう…。僕、朝倉のこともっときちんと知りたい。)
そこまで思い至った時、正面に座っていた朝倉はようやく同期の変化に気づいたらしく、眼前で手をひらひらと振って、大丈夫か、と声をかけ始める。
(それから…。)
すっと目を眇めていると、朝倉の大きくてどっしりした手が獲物の片頬を優しく撫であげる。宵宮はその感触で、我に返る。
「あ…っ、ごめん。朝倉。ボーッとしていた。」
「…いいよ。調子に乗って色々見て回ったし、疲れたろ。そろそろ帰ろうぜ、お前ン家。」
柔らかな声。大切そうに自分を撫でる手つき。相手を無理させないように、やんわりとした立ち振る舞い。全てが、宵宮の心を痛いくらい締め付けて…離さない。
(朝倉に…僕のことを好きって思ってもらいたいんだ。なんだ、僕、やっぱり朝倉のこと…。)
朝倉が席を立つ。目の前で背を向けようとする相手を見て、宵宮は咄嗟に…彼の片腕を掴んで引き留めた。
「え…。」
あっけにとられている優しい男に、宵宮は両手でテーブルを叩くようにして立ち上がる。
「僕は、…朝倉が好きだ!!」
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