アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
74
-
『あ、ああ…。だ、大丈夫!!それより、どうしたの??』
朝倉も自身の声量の小ささに気が付いたのか、慌てて声を張ったらしい。
「朝倉に話したいことがあって…。明日の朝、屋上に来てくれないか??大切な話なんだ。」
電話口の向こう側で、朝倉が息をのんだのが気配で伝わった。
『う…、うん。美月チャンの話なら、もちろんいつだって聞くよ。』
「ありがとう。」
宵宮は携帯をぐっと握りなおす。
「じゃあ…。」
切ろうとする宵宮を引き留めるかの如く、相手が小さな声をあげた。
『待って、美月チャン。』
「…っ。」
宵宮は一瞬だけ硬直したが、次には電話相手の優しい声が聞こえて来た。
『おやすみ、美月チャン。寝る前に、こうして美月チャンの声が聞けて、オレ、嬉しい。』
「…おやすみ。」
多少ぶっきらぼうだったが、やっとの思いで返して、通話を切る。宵宮は、そのまま背面からベッドに飛び込んだ。
「…釣られて“僕も”って本音言いそうになったじゃんかよ!!」
床から数センチ上の宙を漂う左右の足をバタつかせて、宵宮は羞恥に頬を赤く染めていく…。
翌日…火曜日の早朝。眠い目を擦りつつ、宵宮は屋上へと繋がる階段を一つ一つ上がっていた。
「う~…。結局、あんまりよく眠れなかったな…。」
屋上へ通じる扉を開けると、眩い日光が視界に入り、朝の涼しい風がさぁっと頬を打つ。
「ん…。」
ふっと目を狭めつつ、宵宮は扉を開け放つ。目が慣れてくると、屋上にはすでに先客がいた。彼は半身で振り返り…儚い笑みを浮かべてみせる。目の下のクマが何重にも縁どられていて、言葉をかわさずとも相手が昨晩一睡もしていないのだとわかった。
「…おはよう、美月チャン。」
「あ…、朝倉!?クマ酷いぞ…??寝てなくて大丈夫なの…っ」
「そんなことより、美月チャン!!」
朝倉は相手の言葉を遮った。獣は獲物の前に駆け出してくると、恭しく跪き、愛しい者の片腕をとる。
「いや、そんなことって…。」
言いかけた宵宮だったが、瞬時に押し黙る。さっと視線を向けた先。…朝倉の手が、不自然なほどぶるぶると大きく震えていた。
_
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
74 / 80