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優しい君
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「良かった、来てくれたんだな」
高橋は目を細めながら俺にそう言った。
日は沈んでないが、高く昇っている訳ではなく。そんなに眩しいはずはないのだが、高橋の笑顔が眩しくて俺の目の奧がチカチカと刺激を感じた。
先ほど崩れたはずの、不安や緊張が今度は違う形で積み上がっていく。あの数日前の危機感がまた押し寄せてくるのを感じた。
「どうしても、お前にまた合ってちゃんと話したくて。正直来てくんないんじゃないかと思ってたからびびった」
「いや……その」
帰りたかった、本当は凄く帰たかのだが。高橋が屋上から下校中の生徒を眺めていたのを思い出した。
高橋は俺があの中に混じって出てくると思っていたのだ。
それでも、少しの可能性を信じて俺の事を待っていたのだ。
そう思うと胸がぎゅーと締め付けられ。帰らなくてよかったと思った。
高橋に俺の心境など分かるはずも無く、高橋は話を続ける。
「俺あの後、色々考えてみたんだ。関わりたくないって言われて、最初は堪えたけど。お前の言ってることも、すげぇ分かるし。俺はこんなんで、周りからいい印象もたれてないって事は、自分でも自覚してるつもりで。だから、お前のイメージ壊しちゃうっていうのも分かるし、お前が関わりたくないって言うのも仕方ないと思ったんだ」
高橋の言葉は一杯一杯といった感じで。目は細められていたが先程のものとは違い、心に何かが詰まったような苦しいような、もどかしいような表情に変わっていた。
そのもどかしさを早くどうにかしたいといった感じに高橋はまた口を開く。
「でも俺、お前のとこもっと知りたいんだ。よくわかんねぇんだけど、気になるんだよ」
高橋のその言葉に。俺の鼓動は、高鳴っていて。だがそれは早いものではなく、一つ一つが体に響くような打ち方をしている。
頭の隅で警報音が鳴っているような気もするが、それは俺の鼓動によってとても小さいものになっていた。
ああ、まずいな…こんなこと、思っちゃダメな気がするのに。俺は嬉しいと思ってしまう。高橋の言葉に凄く安心してしまっている。
「だから、関わりたくないって言ってたけど、もっかい考え直して欲しくて。教室とか周りの目がある時とかは、絶対話しかけたりとかしねぇから。ケイタイでメールとかできたらそれでいいし」
な?と同意を求めてきているかのように、こちらを見てくる。
な?と言われても……
「いや、でも…」
と言い淀む俺に
「周りには絶対、バレないようにする!」
と高橋は詰め寄ってくる。尚も俺が口籠っていると。
高橋はこれでもかといった感じに
「俺たちは!仲良くなれると思うんだ!絶対、友達になれると思うんだ!」
と、口を開く。
「ともだち……」
高橋の口から聞くには余りにも、繊細な単語だったため、復唱してしまった。
高橋も、勢いで言ってしまったようで
「あ、いや…友達つーかなんつーか」
と変に、しをらしい感じになってしまった。
高橋、ちょっと顔赤い?
何だか、俺まで恥ずかしくなってくる。
少しの沈黙があったのち、高橋はガバッともう一度俺の目を見て
「と、とにかく……メアド、教えてほしい」
と縋るように言ってきた。
どうしよう。
何なんだろうこの気持は、嬉しいというか、何というか。
何だか凄くドキドキする。
少しだけ響いていた警報音はもう完璧に聞こえなくなっていて、変わりに心臓がうるさく脈打っている。
友達……
俺と高橋が?
これから、こうやって話たり、メールしたり、するのか?
できるのか?
高橋の顔をみてみると、期待と不安を混ぜ合わせたような顔をして俺の返事をまっていて。
あぁ、もう。その顔は反則だ…
その、捨てられた仔犬のような顔に。
俺は、少しだけ考えて
「わ…わかった。」
と絞り出すように返事をした。
「マジか⁉︎」
高橋の輝いた顔が眩しい。
あぁ、これは本当にまずいことになったなと、返事をしてから後悔が襲ってきた。
高橋の眩しい笑顔が目に染みる。
こうして、俺と高橋は周りの目がある時は他人のふりをし。影でコソコソ仲良くするという、友達になったのである。
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