アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
可愛い君
-
「え。て何それ」
呆れた優はやはり口を入れてきた。
「いや、別にこのままメールだけしてるつもりはないけど。せっかく仲良くなれそうなんだし、いつかはどっか遊びに誘うつもりだし。」
「いつかは。ね」
優は意味ありげにこちらに目線をやり「そんなこと言ってたら、いつかは。自然消滅だよ」
と恐ろしいことを言ってくる。
俺が反論しようと口を開くと
「間違いないな」
と健人がすかさず口を挟んできた。俺は開いた口を塞ぐことができなくなり、助けを求めるように優と健人を見ることしかできなかった。
「まぁ。斗真のその気持ちも分かるけどね。最初拒否られてるわけだし、メールできてるだけでもいい方だって俺も思うけど。でもさ、せっかくメールできて、教室で顔を見ることもできるっていうのに、話せないとか何かおかしくない?確かに、明希ちゃんは斗真と仲良くしてんの見られたら気まずい思いしなきゃなんないんだろうけど。かといってそんなに疾しい関係でもないんだから、普通に遊びに行くくらいしたらいいじゃん。寧ろどっか遊びに誘わないと、あっちはメール得意じゃないみたいだし、クラス変わって顔合わせなくなったとたんに音信不通で自然消滅なんてありえない話じゃないよ。今のうちに仲良くなっとかないといけないんじゃない?」
優の話を聞いてか急に焦りがうまれてくる、何でこいつの話は何時も的を射ているような気がするのだろう。
俺は今まで優に言われたことを鵜呑みにし、酷目にあったことが何回かある。
だから何時も、そう簡単には流されないようにしているが、今回は流石に優の言葉が正論だと思う。
これは…早く遊びに行くでもして距離を縮めないといけない。
俺がそう結論を出していると
「お前がそんな事言うと、またこいつが突っ走るだろ。」
と健人からの横槍が入る。
「別に誘うのはいいかもしれんが、時期を考えろよ?ただでさえメールすらまともに返ってこないっつーのに、今遊びに誘って来ると思うか?」
「間違いなく来ないな」
俺の即答に、だろ?と健人が頷く。
「別にそんなに急げって言ってるわけじゃないよ!話題作りも兼ねて、試験終わったらどっか遊びに行かない?って声かけるくらいしたらいいじゃん」
「話題作り…」
確かに、このまま挨拶ばっかりしてるよりかは、話が広がるかもしれない。
「そうそう話題作り!それに、取り敢えず、そのうち遊びに行こっね〜。って前置きしといた方がいいでしょ?後からも、誘いやすくなるしさ!」
なるほど……言われてみればそうかも。
いきなり誘うよりかは、日高も考えてくれるだろうし。
俺は健人の意見も聞きたくてチラリと健人を見やる。
俺の視線を感じて
「まぁ、さり気なくそれっぽいこと言うくらいだったらいいんじゃねーの」
と健人が呆れ混じりに言った。
よし、健人もこう言ってることだし、日高に声をかけてみよう。
そうと決まったら、早くメールを送りたくて仕方がなくなった。
でも、今日のメールは俺の「おはよ」から始まり
「おはよう」と返事があり
「最近暑くなってきたな」で止まっている。
今までの流れでいくと、帰りごろに「そうだな。明日は更に暑くなるらしい」とかきて
「まじかーもう完璧に夏だな」みたいなことを俺が送り
「そうだね。明日も頑張ろうな」ときて
「おやすみ」となる
自分で想像して泣けてくるな。
完璧にパターン化された流れに、もしかしたら俺は避けられてるんじゃないかと、考えてしまう。
いや、違う。期末のせいだ。そうに決まってる。
くじけそうな自分にそう言い聞かせ、このパターン化された流れを変えるには、やはり遊びに誘うなり何なり言わなければないけないなと思った。
「あくまでさり気なくだからな、この忙しい時期に直球で誘っても絶対いい返事こないぞ」
という健人の忠告など、いつもと違う展開を予想して胸を高鳴らせてる今の俺には、入ってこなかった。いや、耳には入ったが全く脳に入ってこなかった。
「大丈夫なのかよ、こいつ」
「大丈夫大丈夫〜」
「お前、楽しんでるだろ」
「楽しむ?なにが?俺はただこういう展開になれば手っ取り早いなと思っただけだよ。いつまでも、ケータイ片手にそわそわしてる斗真見るのも嫌だしね。それに健ちゃんだってちょっとは面白がってるでしょ」
「お前と一緒にするな。まぁ、でもこいつ見てたら本当、単純すぎて逆に笑えてくるな」
「でしょ?それに、世の中当たって砕けろ。だよ、こうも単純だと何回も再生できそうだし」
優と健人のこの言葉も、もちろん俺の脳には入ってこなかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
26 / 35