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可愛い君
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お昼休みが終わるより早めに優と健人と別れ屋上を出た。
別れ際に優から「本当に健気だね~授業にまでちゃんと出るなんて。まぁ応援してるから頑張ってね、真面目君」などとちゃかされたが相手にするのはやめておいた。
俺だって何でわざわざ授業にまで出ているのか分からない。メールだってやってるし、一応友達の様なものにはなれた。それでもう満足じゃないか。と自分でも思うのだが。
ただ、何故かジッとしていられない。気になる。メールを送って返事がこなければ、何をしてるのか気になるし。ちゃんとメール見てんのかも気になる。だから、教室に来てしまう。
それに、あの教室のあの席に座っていれば日高は近くにいる。喋ったり、触ったりなんて事はできないが、日高がそこにいるってだけで、それだけで何だかいいと思えてしまう。
教室に入るため扉の窪みに手をかける。指先が金属に触れ少しひんやりとする。
中に入れば、まだクラスの奴らはざわざわと騒がしく、けれど何時もよりかは席につき勉強している奴が多いような気もする。何人かで束になり教科書やノートを照らし合わせている奴らもいる。
なるほど、これが期末試験というやつか。試験があると知らされるまで、このクラスメイトの達の変化に気付かなかった。
しみじみとそんなことを考え、問題の人物を見ると、俺が教室を出ていく時と全く変わらない姿勢で変わらない事をしている。
これはケータイ見てないな。
自分が気にしている分、相手の反応に少し虚しくなる。
いや、期末だから仕方がないんだ…周りの奴らだってこんなに必死になってんだ、優も戦いだとか何とか言ってたもんな。
と、心に言い聞かせながら席につき、ないとは思うが一応メールがきてないかチェックをしようとケータイを取り出す。
うん、きてないな。
しんみりと確認を終わらせると。「高橋」と名前を呼ばれた。目線をそちらにやると、最近よく絡むようになった西川が俺の机の横まで来ていて、隣の奴がいないことをいいことに、隣の机の上に尻をのせた。
西川は、このクラスで1番最初に声をかけてきたやつで、何かと世話を焼いてくれるので助かっている。休み時間などもよく声をかけてくるので暇な時間を過ごさなくていい。
俺は西川の方へ体を向け「おう」とだけ言った。
「おかえり。どっか行ってたの?」西川の陽気な声に
「あぁ、ちょっと屋上にな」と答えると、西川は顔をニヤっとさせた。
「あー屋上ね。君たちが先輩からぶんどったという例の…」何かを含ませた物言いに
「は?なんだそれ」と呆れ半分、苛立ち半分で答える。
「噂だよ。う、わ、さ。結構色んな武勇伝流れてるぜ。まぁ、お前と話してたら噂もデマだって何となく分かったけどな」
「噂?」
「あぁ、本人はあんまり知らないんだ。凄いぜお前、ヤクザと関わってるとか、前科持ちだとか」
と西川は言い、俺本人が知られざる俺のあれやこれやを話し出した。
西川から教えられたことは、全く身に覚えのないことばかりだった。
まぁ、何かしら言われているだろうとは思っていたが、予想以上のもので。そんな奴がこの世にいると思うのか?と信じてる奴がいるなら問いたい程に、噂の内容は酷かった。
西川の話を聞き俺が気になったのは。日高はこういう噂を知っているのだろうかということだった。
もし、知っていて。全部とはいかないまでも、何個か信じているようなら、今すぐにでもその汚名をすすぎたいものだ。
かといって、今の俺ではそれもままならないが…
そんな事を考えていると、後ろの方から「なぁ、日高」と日高を呼ぶ声が聞こえてきた。
その声を野うさぎの如く聞き取り俺は。あぁ、またあいつか…と少しうんざりする。
通路を挟んで日高と席が隣の奴。名前は…
「ん?なに秋原」
そう、秋原だ。日高が奴の名前を呼ぶことによって思い出す。
秋原は、俺が思うにクラスで一番日高とよく喋っている。と言っても殆んどが勉強に関することだが。最近会話率が上がったと思っていたが、試験前の影響だったのかと今更ながら理解し、少し安心した。
俺は地道にメールしてるっていうのに、何にも縛られることなく日高と話の出来る奴が羨ましい、と思う。でも、先ほど聞いた西川の話の中の俺を思い出し、あんな噂が流れてたらそりゃ関われないよな、とも思う。秋原にはあんな噂は微塵もなさそうだ。どちらかというと日高よりのやつだもんな。
「でさ~。あとここんとこが…」
俺の悩みなど露知らず、秋原は日高に気軽に話しかけ、その問いに日高は「あぁ、ここは…」とこれまた気軽に答える。
俺のメールには答えてくんねぇのにな…
などと考え、胸がムカムカしてくる。いや…駄目だ、あいつらは勉強してるんだ。俺のメールの内容なんて、勉強など毛ほども関係の無いことばかりだからな。後回しにされても仕方あるまい。
「ありがと日高。やっぱお前頼りになるわ」
「いや、全然。俺の方こそ勉強になってるよ、人に教えるってなると見方が変わるみたいで、前よりも身になってる感じがする」
「身になるって、それ以上賢くなってどうすんだよ」
「え?賢くって何言ってんだよ。俺なんかまだまだだよ。寧ろ秋原は飲み込み早いみたいだからすぐ抜かされそうだ」
「お前が言うと嫌味にしか聞こえねーよ」
そう言いながら二人で笑いあっている様子が後ろから感じられる。
日高は、あの時のように笑っているのだろうか、振り向いてチラッとだけでも見てみたいという衝動にかられる。
「おい、高橋聞いてる?」
俺がよし今だ、と振り向くタイミングで丁度よく…いや悪く、西川からのお声がかかった。
「あ…あぁ。ごめん何?」
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