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なんとか始業時間ギリギリにデスクに着いた。
真剣な顔でパソコンと向き合う先輩を見つめてぼーっとしていると、後ろから肩を叩かれる。
「ちょっといいか?」
「……はい。」
振り返ると、立っていたのは柳津さんだった。
はいはい。早く返せってことね。
そう思って、紙袋を持って後をついていく。
「これですよね。」
「あー、それもなんだけど…。」
「他に何か?」
「一個確認してもいいか?」
「…?はい。」
柳津さんは紙袋を受け取り、真面目な顔して俺の目を見た。
「浮気、してないよな?」
「は?してないですよ。するわけないじゃないですか。」
「そうだよなぁ…。」
「何?先輩がそう言ってたんですか?」
「いや、忘れて。」
いやいやいや。
忘れられるわけないだろ。重要だろ。
俺が浮気?今まで先輩にしか浮ついてないこの俺が?
それが理由に避けられてるなら、尚更ちゃんと話し合いたいんだけど。
いろいろ言おうとしたら、柳津さんが先に口を開いた。
「昼休み、空いてるか?」
「空いてますけど、何ですか?」
「………綾人と、二人きりになってみる?」
「………!!!」
驚いて言葉が出なかった。
え、会っていいの?
話す時間を取るのは無理だって言ってたのに。
先輩はいいって言ってるのか?
この人がパーカーのことバレないように勝手にセッティングしただけとか…。
「触れる許可は綾人から得てるから。」
「触っていいんですかっ?!」
「条件付きだけど。」
「何ですかっ?!」
食い気味に確認すると、柳津さんは苦笑しながら答えた。
「あんまりがっつかないこと。触れるつっても、手握るとか、それくらいにしてやって。」
「わかりました。」
「綾人さ、最近城崎の前だと過呼吸なったりするじゃん?」
「はい……。」
「あれ、治したいって思ってるんだって。だから、少しずつ距離戻せばどうかなって、提案してみたんだよ。」
「ありがとうございます。本当に…、本当にありがとうございます。」
もしかしたら、もう先輩に触れられないかもしれないと思ってた。
どうしよう。
嬉しい。嬉しすぎて動悸がする。
「会議室取ってるから。綾人には先に待っててもらうから、城崎は5分くらい遅れて来てくれるか?」
「わかりました。」
「よし。じゃあ昼休みな。」
柳津さんは俺の肩にぽんっと手を乗せ、部署に戻って行った。
俺はというと、嬉しすぎてソワソワしまくって、午前中は使い物にならないくらい仕事が進まなかった。
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