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クリスマスSS 昼夜問わず(後編)
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「…でね、その時、課長が言ったんだけど。美月ちゃん、あの場にいなかったでしょ??」
「…。」
「美月ちゃん??」
朝倉に名前を呼ばれて、僕はようやく我に返る。
「あ、ああ…。ごめん。なんて??」
「いや、あの場に美月ちゃんいなかったでしょ??って訊いたんだよ。」
「う、うん…。そうだな、いなかった。」
(…おかしい。)
僕は、グラグラ揺れ出した視界で考える。
今夜の朝倉は、やけに饒舌だ。こういう時の朝倉は、何かを企んでいるのに違いない。
違いない、んだけど…。なんか、さっきから、あしもとがふわふわする。こころが、うきあしだっているかんじ。心なしか、さっきからいい気分…。からだに、力がうまくはいらな…。
「危ないっ!!」
椅子から上半身が傾いだ僕を朝倉が支えてくれる。大きな手で支えられて、柄にもなくドギマギしてしまう。
「美月ちゃん、大丈夫??」
顔を覗き込まれる。うわ、本当に端正な顔つきだ。輝きを放つ瞳に、吸い込まれそうになる。
「…酔っちゃった??」
「…うん。」
僕は、子供みたいにこっくりと頷く。僕の身体を支えている朝倉が、ふっと微笑む。
「仕方ないな。寝室に運ぶよ??」
「…ん。お願い…。」
視界は、キラキラとクラクラがいっぱいだ。身体はアルコールが回っているせいだろうか、妙に火照っている。朝倉が僕を寝室に連れて行こうとしている。…姫様抱っこだ。頭を緩く左右に振って、“やめて”と示したけど、朝倉は気づいてくれない。
(でも、ヘンだな…。こんなペースで飲んだつもりないのに…。)
(もしかして、このワイン、アルコール強めだったのか??畜生、ちゃんと確認してなかった。)
(だけど、朝倉だって飲んだはず…。)
そして、僕は見てしまった。乾杯当初から僅か数センチしか減ってないように見える、ほぼ手つかずの朝倉のワイングラスを。
(朝倉は、何故饒舌だったのか。)
(話しまくったら普通、喉が渇くからグラスに手がいくはず。)
(っつか、朝倉が話すから、僕が聞き手に回る。食事や飲み物に手がいくようになる。)
何か…イヤなパズルが完成しそうだった。
(朝倉、まさか僕を酔っぱらわせる目的でここにワインとケーキを持ってきた??)
まさか、と僕は気力を振り絞って運んでくれている親切な人に声をかけてみる。
「朝倉、やっぱリビングのソファーに寝たい。連れてって。」
「…いやだ。」
グラグラ。視界が揺れる。
「朝倉、強引が過ぎるぞ。」
「…前から思っていたんだ。素面じゃない、本音を口にしてくれる美月ちゃんとHしてみたいなって。」
熱のこもった身体を運ぶ狼が、ついに牙を出した。…こっっっわ。
「や…っ、やだからな。シないぞ、今夜は。」
「でも、こんなに身体熱いのに。」
あっという間に寝室についてしまった。ベッドに丁寧に横たえさせられる。舌なめずりをした獣が、覆い被さってくる。
「やだ…。やだって…っ!!」
言っている間に涙目になってくる。ヤバい。酒が入っている分、情緒不安定になってしまっている。
「大丈夫、優しくするから。」
片頬を一撫でされる。優しい触れ方に、この手に酷く扱われるかもしれないと思うと、瞳から涙が溢れ出した。
「やぁ…っ!!」
涙が止まらない。ぐすぐすと無様に鼻を鳴らしていると、心配になったらしい獣に頭を撫でられる。
「ごめん、美月ちゃん。泣かせる気はなかったんだ。」
「ウソだ。ウソ…ッ!!…じゃなきゃ、何でこんな怖い目にあわせるんだよ。」
「悪かった、美月ちゃん。だから泣かないで、もう強引にシない。」
舌先で涙を舐め上げられ、目元に溜まった涙も唇を寄せられて吸い取られる。僕は下唇を噛みしめながら、ぽつぽつと語りだす。クリスマスの夜は好きな人と二人きりがいい。特別なことなんて望んでない。ただ、一つのベッドで身を寄せ合って眠りにつきたい。
「…そうか。そうだったんだね、ごめんね。」
朝倉が僕をぎゅっと抱きしめてくれる。やんわりと、こちらを気遣う抱擁だ。
「じゃあ、今夜はこうして寝ようか。」
「え、でも…。」
僕はそっと、視線を相手の下半身に落とす。そこは昂って、立派に存在を主張し始めていた。
「…気にしないで。」
朝倉に再び抱き寄せられる。額にキスを一つ、落とされる。
「美月ちゃんが望むなら、こんなもの、いつでも切り落とす。」
「…それは、僕も困りそう。」
本音を吐露したら、朝倉は小さく笑い返してくれた。
自然と互いの視線が絡み合う。…どちらともなく、唇を重ね、触れ合うだけのキスをした。
「…何のキス??」
小首を傾げる僕に、朝倉が苦し紛れに答える。
「誓いのキス。」
僕は声をたてて笑ってしまった。
「…下品!!」
…今年のクリスマスの夜は、寂しい思いをしなくて済みそうだ。
(Cocktail Trap END)
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