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7 高橋side
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高橋side
坂崎に昨日寮に帰ってきて助けると伝えた次の日、俺は保健室に来ていた
「失礼しまーす…」
なるべく静かに入って先生を探した
授業中の方がいい気がしたから頭が痛くてと嘘を吐いてきた
本当は全然元気なんだけど坂崎の話だから、なんとなくがやがやした空き時間に行くのは気が引けた
聞かれたくない話だって…きっとあると思うし
「おお、高橋。どうした」
石川先生はノートパソコンとにらめっこしていた
本当に医者って思うほど白衣が似合っている先生で、中はいつもカジュアルな私服だ
髪型も黒で特に染めてたりだとかワックスなんかもあまりしてなさそうなくらいの自然な印象
保健室の先生だから教室とかには滅多に来ないし、職員室にもほとんどいない
そしてここに来る生徒のことはすごく大事にしてる、らしい
俺もここには数回しか来たことないからよく知らないけど結構いろんな噂がある
まあでも先生の顔と坂崎への行動を見ればそれも全部嘘だって言うのがわかる。先生見るからに真面目そうだし
「え、っと今話いいですか?」
「話? 具合が悪いわけじゃないのか」
「…坂崎の、ことで」
そう言えば石川先生の顔つきが変わった
「そこ座れ。何があった」
「あ、違うんです。何かがあったわけじゃなくて、俺の…その、気持ちが変わった、から」
先生とこうして話すのも数回しか無いから緊張する
坂崎のことだから余計に言葉を慎重に選んでる部分もあって口が震えてるのがわかった
俺の気持ち、それと昨日坂崎に伝えたことをそのまま伝えれば先生は口に手を当てて何か考えているようだった
「…要するにお前はもう坂崎をいじめない。そう捕らえていいんだな?」
「はい」
「お前も危なくなるんだ。坂崎と一緒にいじめられる可能性だってあるんだぞ。それもわかってるか」
「……はい。俺は坂崎みたく強くない、ですけどね」
考えてないわけじゃなかった
バレないように坂崎を守ったりすることは難しいときだってある
そうなれば相馬達から坂崎と一緒にどこかに連れていかれるかもしれない
「それでも、俺は何とかして…助けたいです」
はっきりと言えば少し視線を反らして考え込んでいて、どうしたんだろうと首を傾げる
「高橋」
「? はい」
「最初はきっと信じてないだろうから、そばにいてやってくれ」
そう言って優しく微笑んでいた
…初めてみた表情に、思わず目を見開く
「俺もお前らが何かあったときはすぐ行く」
「……はい」
返事しか、出来なかった
坂崎は石川先生とどういう関係なんだろう
…まさか、ね。さすがに俺が考えてるような関係じゃないとは思うけど少し気になってしまう
でもそれを聞く前に坂崎を助けることに先生も賛成してくれた
よかった、それに先生がいてくれれば多少こじれてもなんとかなる
「高橋が付いてくれて安心だな」
「…え? どうして、ですか?」
生徒よりも先生の方が明らかに立場があるから坂崎を助けることが出来るはずなのに
「先生だと口出しできないことがあるし、生徒は隠すのが上手いから見つけ出すのにも時間がかかるんだ。最近は授業持ってる先生も共犯らしいしな。見て見ぬフリだ」
確かにクラスみんなは先生にはばれないように行動していた
特に石川先生は坂崎を大事にしてるっていうのも知っていたからなるべく使われていない教室を選んだりしている
ほとんど相馬が決めて坂崎を連れ回しているけどなんとなく俺達も石川先生のことは頭に入れて見て見ぬフリをし続けていた
しかも、授業の先生のことまで気付いてるなんて…さすがだった
「………すいませんでした」
言い訳だけど、俺は見て見ぬフリしかしてない
だけどそれだって共犯で実際坂崎は俺を見て過呼吸を起こした
先生も俺のこの話にすごく考え込んでいたからきっとまだ信じてもらってはいないんだと思う
全部、これからの行動と気持ち次第で変わっていくんだ
坂崎を助けるその前にまずは信じてもらわないといけない、とても…難しい
「言っただろ、先生も安心してるんだ。大人の事情が変にいじめを守ってる節があるからな。困っていたんだ」
「…大人の、事情」
時々聞く、大人の事情という言葉に俺はズキリと体の奥が痛んだ
「頑張って坂崎を守ろうな、高橋」
はっとして顔を上げれば先生はほっとしたような顔をしていた
今まで許されないことをしてきたんだ、それ以上に役に立って坂崎を無事に助け出せれば償いに…なるだろうか
「あ、りがとうございます…本当に、すいませんでした」
頭を下げれば涙が一粒零れた
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