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――ピンポーン
「はーい」
高橋がドアを開けに行った
僕は体に一気に力が入って、思わず体育座りになる
「大丈夫だ」
先生が頭を撫でてくれるけど僕は落ち着かないままだった
「達也。どうも」
びく、と肩が跳ねて顔もその人に向けられないぐらいがちがちになってしまった
「どうも。いらっしゃい、久しぶりだな」
「そうだね。前に会ったときからだいぶ経ってるし」
どうやら、先生と桜井さんが会うのは久しぶりみたい。声でしかまだ判断出来てないけど嫌な人には聞こえなかった
「えっと…そこで丸くなってるのが坂崎君、だよね?」
「ああ。祐、挨拶だけなら出来るだろ?」
ぐいっと体ごと桜井さんの方に動かされて、少しだけ顔を上げる
「っ、あ…の、さかざき、ゆう…です」
見た目はそんなに怖くなかったけど、知らない人ってだけで体が震えた
「はい。坂崎君、俺は桜井明良って言います。今すごく怖い思いしてるみたいだからお話は少しずつしていこうね。達也と一緒なら会話は出来そう?」
「しろって言ったらする程度だろうな、今のこの状態だと」
「それなら…わかった。達也と話してる中に入れば大丈夫そうかな」
ちょうど積もる話もあるし、と桜井さんはにこりと笑う
「わかった。祐、こっちに移動だ」
「わっ、え…?」
ぐいっとまた移動して胡座をかいた先生の上にぽすりと収まるように入る
「…先生? なに?」
混乱しながらも先生の暖かさに安心して体育座りのまま寄りかかれば、顔だけ僕の方に向いた
「俺がここにいればとりあえずは大丈夫だろ。それに明良を前にして慣れてもらう為でもある。怖くなれば捕まっててもいいしな」
「…いいの?」
邪魔にならないかな
話をするのに僕なんかがいたら気になって話せないんじゃないのかな
「聞かれたら困る話はしないから大丈夫だよ。今日は声とか表情とか雰囲気を坂崎君なりに感じてくれたら嬉しいかな」
桜井さんの返事に先生も頷く。いてもいいなら…先生のそばにいたい。ここで大人しくしてようとそっと先生の服を握った
「そういえば高橋どこに行ったんだ?」
「ここですよ先生。お茶入れてました。どうぞ、桜井さん」
ことりとテーブルに置く高橋は桜井さんを出迎えてからお茶の準備をしていたみたい
「俺はとりあえず部屋にいるんで、何かあったら呼んでください」
高橋はそれだけ言うと早々に部屋に入ってしまった
「あっちもあっちでいろいろ抱えてそうだな…」
「…高橋が?」
「え?」
「っ、すいませ…」
どうやら桜井さんの独り言に反応してしまったみたい…失礼なこと、しちゃったかな
「ううん。何かありそうだなと思ってるぐらいなだけで絶対何かあるとは思ってないよ」
「…?」
「少し難しかったかな」
ごめんねと謝った桜井さんに先生が積もった話を始めたおかげで、これ以上桜井さんと話すことはなくなった
基本桜井さんが話をして、それを先生が聞いて相槌を打つようだけどたまに先生も話をしてたまに笑ったり怒ったりしていた
友達ってこんな感じなのかな…会って、話して笑ってる
学校の友達とは違う気がするのはなんとなくわかった
「そういうことか。そうだね、高橋君は信じてもいいと思うよ。さっきちらっとだけど見てちょっと特殊な感じがしたし…まだ話はしてないから詳しくはわからないけどきっと坂崎君のいい友達になれるんじゃないかな」
「…ともだち」
僕と高橋が友達…?
今の二人みたく、笑って何かを話せるのかな
「二人とも今はまだ自分のことで精一杯だとは思うけど、一緒にいればいるほどお互いのことちゃんとわかってくるしね」
信じられないのに、それでも友達ってなれるものなの?
僕は…高橋と友達になりたいのかもわからない
少し、気にして見てっていうのは先生に言われてやってることだから…それを越えたら、友達なのかな
…桜井さんの言葉が難しい
「坂崎君が難しい顔してる」
「高橋と友達になるっていうのが信じられないんだろ。まだお互いに会話らしいことしてないからな」
「大丈夫だよ。会話って距離感を計るのにとっても大事なことだから」
「手探りしすぎてるんだよな…」
「そうなの? まあいいじゃない。二人にはそれが今は合ってるんだから。必死なんだよきっと」
高橋も、必死…?
会話をしたらもっと伝わるってことかな
でも、僕はもうたくさん伝えたよ
それでも届かないのは…どうしてなんだろう
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