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24 高橋side
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「…あさ、だ」
いつの間に眠っていたのか、目覚ましが鳴って慌てて止めた
起き上がれば体が重たくて気分もあまり良くなかった
「……夢、じゃないよな」
昨日の坂崎のことを思い出そうとするとふわりと血の臭いを思い出して口を覆った
…吐きそうなくらい、気持ち悪い
「……っ」
先生に教えてもらった深呼吸を続ければ何とか吐き気は治まったけど、ベッドから出る気力はなかった
――ブー、ブー、ブー…
携帯が震えて見てみると先生からの電話だった
「…もしもし」
『高橋、おはよう。昨日一緒にいられなくてごめんな。大丈夫か』
「…おはようございます。はい、大丈夫です。坂崎は…? どうなりましたか?」
俺の心配より、坂崎の方を知りたかった
『ああ。大丈夫だ、手術の心配もない。ただすぐ退院にはならないそうだからもう少し落ち着いたら見舞いに行こう』
「…良かった…、無事で」
『高橋がすぐ俺と救急車を呼んでくれたおかげだな。ありがとう』
「え…いえ、あの時は俺も焦っちゃって、全然…役に立ててなかったです」
先生の声を聞くと少しずつ気分の悪さも落ち着いてくる
今日は、学校休もう…さすがに行けない
『俺は今日そっちに行けなさそうだから明良を呼んでる、大人しくしてるんだぞ』
「…桜井さんが?」
まるで俺が学校行かないってわかってるかのような先生の言葉に少しドキリとした
『ああ。午前中に行くと言ってたからそれまでもう一回寝れるなら寝て待ってた方がいい。合い鍵は渡してある。わかったな』
「え、あ…えっと、はい」
桜井さんが来るなら起きてた方がいいんじゃないかな…
それに寝ようと思っても、寝れる気がしない
『悪い、そろそろ行く。いいか、学校には来るなよ』
「…はい」
プープーと電話の切れた音をしばらくぼんやりと聞いて、ベッドに倒れ込む
…どうして、坂崎はあんなことになっていたんだろう
誰か来た…? いや、オートロックだから坂崎か俺が鍵をなくさない限りは誰も出入り出来ないはず
先生も絶対なくさないだろうから、誰かのせいではないと思う
買い出しで襲われた…? いや、買ってきた袋もなかったし、新しく何かが補充されてる様子もなかった
「……自分で、やった…?」
そう言えばカッターが、落ちてた気がする
…そもそも今の坂崎の部屋は見つけた時のままだ
先生は救急車に乗って行っちゃったし、俺は気力がなかったから片付けも何もしてない
「…やらなきゃ」
桜井さんがもう少しで来るのなら、片付けておかないときっと嫌な気分になる
俺はふらふらしながらゴミ袋と汚れてもいい服に着替えて坂崎の部屋に入った
「……っ、ぅ…」
いろんな臭いが入り交じって、入った瞬間に気持ち悪くて口を覆った
早く片付けしないとと思いながらさっきより力が入らない足で壁伝いに歩くとようやく窓を開けることが出来た
ふわりと外の空気が入ってきて、思わず深呼吸をする
日の光で明るくて綺麗な部屋の真ん中に坂崎の血が広がっていて、その隣にはゴミ箱が置いてある
「…染み抜き、もしなきゃ」
何も聞こえない、何も…感じたくない
そう思わないと昨日のことを思い出して息が苦しくなってくる
大丈夫、大丈夫と自己暗示のように心の中で言い続けながらただ一人、静かに片付けを始めた
+++
「…高橋君!」
「っ、え…?」
気付けば後ろから桜井さんが俺を抱きしめていた
ゴミ箱の物もカッターもゴミ袋に入れて、後はひたすら染み抜きをしていたんだけど集中しすぎたのか桜井さんが来たことに気付けなかった
「あ、すいません…気付かなくて」
何も言わずに、俺の手からタオルを取り上げたから怒ってるのかと思って謝るとそのまま俺の手を引いて俺の部屋へと連れて行かれた
「…桜井さん? っ、えっと…」
ベッドに二人で座った後、今度は少し強めに俺を抱きしめる。
どうしてこんなことするんだろう
「あの、俺臭いと思うので…離れた方が」
「いいから、そのまま目を閉じて深呼吸して」
いつもより強い口調にやっぱり怒ってるんだと申し訳ない気持ちでいっぱいになりながらも言われた通りに深呼吸をする
「深呼吸することに集中して、何も考えないで」
…段々と朝みたいに体が重くなってくる
桜井さんが背中を撫でてくれて何とか息が出来てるみたいに思うほどで目を開けるのも億劫だった
「…次起きたら、少し体楽になってるはずだからこのまま休もう。俺、ずっとそばにいるから。一人じゃない」
「…ひとり、じゃ…ない」
俺は寝るのかな、怠くて、重くてよくわからない
でも意識が沈んでいく
「どうにかしないと…っ」
最後に桜井さんの声がした
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