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目を開ければ天井が白かった
体はぴくりとも動かなくて首だけ動かして周りを見てみればベッドの向こうはカーテンがされていた
そしてベッドも白くて両腕には包帯がされていて、でも点滴もされていた
「…てんてき」
なんで僕…ここ、どこだろう
――シャ
「っ、坂崎君?」
カーテンが開いて出て来たのは桜井さんだった
久しぶりでもないけど、何だか懐かしく感じて小さく頷いた
動かしにくい腕が段々と痛く感じてきて自然と息が荒くなってくる
「ナースコール押すね。起きたら伝えてって言われてるんだ」
ナースコール…って何だっけなとぼんやりする頭でなんとなく考えていたらたくさんの足音が聞こえてきた
「おはよう坂崎君。今、君がどうなっているかわかるかな?」
「……」
カーテンが少し大きく開かれて出てきたのは白い人達だった
「少しぼんやりしてるみたいだね。もう少し休んでお話出来そうだったらまた来るね。桜井さんお願いしてもいいですか」
「はい。またナースコールでいいですか?」
「ええ。すいません」
いえいえ、と返した桜井さんに白い人達はカーテンから出て行く
「……っ」
…もしかして、ここって
「坂崎君?」
カーテン、白いベッド、白い人達、白い天井、点滴
「…びょう、いん」
「うん。そうだよ」
桜井さんが椅子を持ってきて横に座った
僕はそんな桜井さんに背を向けて動かない体を必死に動かしながらベッドから出ようとした
「っ、だ…やだ」
病院は本当に嫌いだ
だって…お父さんとお母さんが死んだ場所で、僕は一人で何もわからなくて痛くて怖かった
そんな僕に知らない人がたくさん来て何かわからないことをずっと話してはいなくなっての繰り返し
…先生だけが居てくれた
「坂崎君、どうしたの」
「やだ、ここ…っ、や、やだ、やだ」
力の入らない足で立ってカーテンを開けようと掴めば桜井さんに手を捕まれた
「病院、苦手?」
「ん…、やだ、こわい…っ、はなして…やだ、や…」
震えだした僕に桜井さんはカーテンを掴んでいた手を離してベッドへとゆっくり戻され座る
「落ち着いて、少し深呼吸続けようか」
桜井さんと両手を繋いで深呼吸を何回か続ければ、少しだけ怖さと震えはなくなった
「何が怖い?」
「…ここ、いると…知らない人…いっぱい来て…動けない、先生に会いたい…っ」
先生がいてくれたら、今みたいに両手を繋いでくれたら少し怖くなくなる
「達也はもう少しで来るよ。ところで俺のことわかる?」
「…さくらいさん」
「良かった、今度は忘れられてなかった。俺は怖い?」
「…こわく、ない…でも」
でも先生がいい、と小さく言えばそうだよねと頭を撫でられた
「…そと、いきたい」
ずっと白いこの場所にいるのが、辛い
「…本当はまだストップかけられてるけど、この状態じゃ逆効果か。いいよ、行こうか」
桜井さんに下まで連れて行ってくれた
一階のところに行けば知らない人がたくさんいて、震えが止まらなかった
「おいで、ここ座ったら外見れるよ」
そう言って座った場所は窓ガラスから中庭が見える場所だった
人もあまりいなくて後ろには売店とどこかのドリンク屋さんが並んでいた
「……そと」
「うん。綺麗に晴れてるね、これから来る夕焼けも綺麗かもしれないよ」
じっと見つめる中庭は広くて遊具もたくさんあった
小さい子や大人の人が遊んでいたり、陰から見守っていたりと賑わっていた
「…さくらいさん」
「ん?」
「…あの」
言っても、怒られないかな
「…ぼく…しにたかったです…。みんな、ふこうになるから」
遊んで楽しそうに笑ってる人達を見ながらぽつぽつと零れるように話した
「たかはしが、そうまくんたちとくらすのみんなに…もうぼくをいじめないっていったんです」
「うん」
「そうまくん、すこしおこってるようにみえた。そのおかげなのか、わかんないけどいちにちなにもされずに…へいわにすごせたんです。すごく、ひさしぶり…でした」
「うん」
「だけどかわりに、たかはしはともだちとけんかしたみたいで…しっぷ、してたんです。でもきにしないでって。ぼくは…っ、たかはしに、こんなことしてほしくなかった…っ」
ぽろぽろと涙が出てくる、これは何の涙なんだろう
「だってたかはしは…、ぼくとは、ちがう…」
もうこれ以上そうしてほしくないから、中心になってる僕がいなくなれば解決すると思った
「坂崎君は優しいね。だけど、死んでいい人なんて誰もいないんだよ」
――生きて欲しい
ふと二人の声が聞こえてぴくりと体が動いた
「…っ、でも…ぼくがいきてたら…」
「達也は坂崎君に死んでほしいって言ってた?」
「…いって、ないです…むしろ、いきてほしいって…」
だから、わからなくなる
「それならなおさら生きなきゃ。坂崎君が死んじゃったら達也すごく泣いて悲しむし、死にたいって思うかもしれない」
「っ、それはだめ…」
先生がそんな風に思うのは…悲しい
桜井さんは僕を抱き寄せて頭を撫でる
「達也も坂崎君と同じこと思ってるよ。大事で大好きだからずっとそばにいたいし守ってあげたい。もちろん俺も」
「……ほん、と?」
うんと頷いた桜井さんに僕はまた少し涙を流した
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