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26 桜井side
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桜井side
坂崎君は病院が苦手らしく、ずっと背が丸まったままだし心なしか震えてもいた
達也から聞いたけど両親が亡くなってから親戚とほぼ強制的に対面して話をしたらしい
それが坂崎君にとってとても怖いものになったんだとこの様子からしてわかった
今は少し落ち着いたのか俺に寄りかかったまま外をじっと見つめている
…達也、早く来てあげて
「さ、くらいさん」
「ん?」
つ、と坂崎君の涙が頬を伝うのが見えて裾でそっと拭う
「…ぼくも」
ぐ、と口をすぐ閉じて何かを我慢するように俯いてしまった
「言いたくなかったら無理に言わなくてもいいけど、今の続きは俺聞きたいな。笑ったりしないしもちろん怒ったりもしない。当たり前を願っても俺たちしか聞こえないから大丈夫」
言えるようにと背中をゆっくりと撫でる
「っ…」
ぽとぽとと涙を流すけど、なかなか口は開かない
力が上手く入ってない手が拳を作ってまで言うことを我慢していた
その時、急に坂崎君が立ち上がった
どこかに行こうとそのままゆらゆらと歩き出す
「待って、坂崎君。移動するなら俺も一緒に行く。どこ行きたいの?」
体調も精神的にもあまり良くないから歩くので精一杯なはずなのに今のは確実に逃げだそうとしていた
拳も作ったままで、震えている
「…っ、や、ぱり…だめ」
しにたい、と零した坂崎君に俺はここまでかと携帯を見れば達也がちょうど病院に着いたとメールが来ていた
「坂崎君。達也ここに着いたみたいだから一回病室戻ろうか」
「せんせ…?」
「そう、先生だよ。良かったね」
顔がゆっくり上がる。目が真っ赤に腫れていた
「せんせ、来たの…」
嬉しい、だけど迷ってるような表情をしていて俺は背中を撫でながら一緒に歩き出した
+++
「やっと戻ってきた。大丈夫だったか」
「ただいまー達也。うーん…正直まだ落ち着いてはいないかな。病院苦手でちょっとパニックっぽくなってたからロビーの方から中庭見えるところで座ってたんだよね」
病室に戻れば達也がいて俺が座っていた椅子に座って待っていた
「あれ、高橋君は?」
二人で来るって連絡だったのに達也しかいないのが不思議だった
高橋君なら飛んできそうなのに…もしかしてと眉が寄る
「トイレに行ってから来ると言ってたんだが…っ」
「その反応からするに、だいぶ経ってるみたいだね。俺行ってくるから坂崎君のことそのまま見ててあげて。達也いなくて寂しがってたから」
「ぁ…せんせ…」
先生を見つけた途端に、びくりと肩が跳ねて顔が真っ青になる
会いたいって言っていた反応と違っていた
もしかして怒られると思ってるのかな
達也が坂崎君の方へ近付いていくにつれて震えが強くなっていた
「祐」
「っ、ぁ…ご、ごめ…なさ」
一歩、一歩と小さく後ずさりする坂崎君に達也はずっと俯いてる頭を抱いた
「…生きてて良かった」
「…ぇっ」
ぎゅうと抱きしめていて坂崎君はくぐもった声で少し混乱していた
「ベッド、戻るぞ」
「行ってくる」
「…悪い」
「ううん。その為の俺だから、それに高橋君は説教だね」
そう言って俺はもう一回ロビーへと急いだ
…また一人で耐えてるのか
「自分がギリギリだってことを気付かせないとな…」
坂崎君の部屋を掃除してた姿を思い出してぞっとした
ショックを受けてずっと眠ってるんだろうと思っていたのに、静かに染み抜きをしていたのが異様で思わず止めに入ったけど
…自己犠牲が強すぎる
「見つけなきゃ」
どこのトイレにいるんだろうと小走りになりながら一番近くの方へまず向かった
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