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33 高橋side
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高橋side
坂崎の言葉をこれ以上聞きたくなくて蹲っていたら、いつの間にか誰かの家にいた
先生に電話して来るまでの間…ずっと離れなくて、悲しくて泣いてたはず
その後、俺…どうしてたんだろう
…全然、思い出せない
「…ソファで寝てたのはわかるけど」
よくわからないままに起き上がれば、ずるりとブランケットが腰あたりまで下がる
ここは一人暮らしなのかそんなに広くないみたいで、最低限の物で過ごしているのか少し殺風景に見えた
それに、と見回しても俺以外の人がいなくてしんとしていた
…知らない人に誘拐されるってこんな気持ちなのかな
段々怖くなってきてとにかく誰も居ないうちに逃げようと少し小走りで居間のドアを開けた瞬間、何かにぶつかった
「っ、た」
「っと。ごめん大丈夫?」
「…桜井さん?」
ふと見上げれば風呂に入っていたのか髪が濡れていてバスタオルを首に巻いた桜井さんだった
「起きたんだね。どう? まだぼんやりする?」
「…え、と…しない、です。ここは…」
「俺の家だよ。少し疲れてたみたいだったから連れて来ちゃった」
にこりと笑って言う桜井さんに驚いた
「ここ、桜井さんの家なんですか?」
考えれば考えるほど混乱してくる
「うん。そして今日このまま泊まってもらうことになりました。もう夜だしね」
「え…? 本当だ」
時計を見ればもう七時を過ぎている。ご飯は…と思ったけど食べれないんだった
「お風呂は先に俺入っちゃって悪いんだけど行っておいで」
「…ありがとうございます」
ご飯のことはきっと桜井さんもわかってる
まだ少し混乱したまま風呂に入らせてもらった
「あの、お風呂ありがとうございました」
居間に戻れば桜井さんはテレビを見ていた、さっきまで巻いていたバスタオルがなくなっているから髪も多分乾かしたんだろうな
「おかえり。熱くなかった?」
苦笑しながら言われてソファに二人で座れば顔少し赤いからと笑う。それがやっぱり大人な雰囲気で小さく頷いた
「…ちょうどよかったです」
笑い返せば、そっかと頭を撫でられる
「ご飯、高橋君が寝てる間に済ませてきたんだけど…気分悪くなるかと思って、これ」
「今度は…オレンジの缶だ」
「飲み物だけどちゃんとカロリーとかあるし、いいかなーって達也と買ったんだよ。確かアップル味だったかな」
桜井さんが缶を覗くとうん、そうだと俺にくれた
飲み物はさっきも飲めたから大丈夫だろうと早速口を付ける
桜井さんは見られるのが気まずい俺をわかってるのか、ポットのお湯を沸かしながら携帯を見ていた
「桜井さん」
「ん?」
「あの、ありがとうございます。いろいろと」
あの時一緒にいてくれたことも、今も…桜井さんにずっと助けられてる気がした
「どう致しまして、なのかな。俺は高橋君のサポートがしたくてしてるからね」
一生懸命で相手のことを考えられる良い子だと桜井さんは言う
だけどそんなことない、と目を反らした
「…俺はそんなにすごい人じゃないです」
「自分じゃわからないことなのかもしれないね」
「…違います。もしそんなにすごい人だったら………坂崎のこと、助けられたなって」
「そうきたか」
マグカップを二つ持って戻ってきた桜井さんはソファの前にあるテーブルに置いてまた隣に座る
「確かにそんなすごい人なら、助けられたかもしれないね」
「っ、だから俺は…」
「でも人間の気持ちはわかるようでわからないものだよ。坂崎君は隠すのが上手かった。自分の部屋でなら何だって出来るし、相手だって気にして入ろうとは思わない。高橋君だって勝手に誰か突然入って来たら嫌でしょ? それを坂崎君は利用した」
「…そんなこと、思ってたのかな…」
「あたり前に思っていたからこそって感じかな。高橋君のことまだ苦手そうというか…距離置こうとしてたみたいだったから」
坂崎は俺が関わる前からずっと部屋に籠もってばかりいた。俺がいるからっていうのもあるけど一人で安全だと感じる場所は自分の部屋しかなかったってことだ
「…やっぱり俺、嫌われてるんですね」
俺が坂崎と一緒にいてもすごく嫌そうだったし、桜井さんに言われるぐらいにわかりやすく避けられてたんだってわかる
「坂崎君は高橋君に、こっちに来て欲しくなかったって言ってたよ」
「…それは俺が入ったとしてもいじめはなくならないから、です。だから自己満足なんだとも言われました」
「最初はそうだったのかもしれない。でも、高橋君のお友達を無くしてまでこっちに来る必要はないってその後に」
「…っ」
もしかして、わかってた…?
「学校も部活もやってて、平和に過ごしてたのを知ってたんだね。高橋君がいじめる子達と一緒だとは多分接して違うって感じてたんだと思う。だから坂崎君なりに考えて出した結果が、今の言葉なんじゃないかな」
「…でも、そしたら…俺、なんのために」
何もかもを捨てようと思ってたことが間違いだったのかな
現に西田には少し怒られたけど今度があったから…多分まだ友達でいてくれてるはず
「高橋君はそのままでいてほしい」
「…でも嫌われて」
「坂崎君、今すごく不安定だからあんまり外の人の言葉を信じられてないんだ。俺も、その一人」
「え、桜井さん…も?」
すごく不思議だった。だって二人で話してたみたいだったし、起き上がらせるのも平気そうだったから
「高橋君より後に知り合ったんだよ? 俺は知ってても坂崎君が知らないとほぼ初対面と一緒だからね。達也がいいって言われちゃった」
「…結構はっきり言うんですね」
「俺はそれぐらいのわがまま言ってくれた方がむしろ安心するかな。パニックみたいになってたから無意識なんだろうけどね。誰だって怖いのは嫌だから」
「……そう、ですね」
桜井さんにまで嫌だって言われるんだからやっぱり俺はそれ以上にきっと嫌われてるんだろうな
俺は今後、どう坂崎といたらいいんだろう
学校のこと、部活のこと…考え直した方がいいのかな
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