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39 高橋side
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高橋side
「あんた、なんでもっと早く言わなかったの…」
二人で部屋に入ったら母さんが仁王立ちで待っていた
眉間に皺まで寄せてるけど怒ってはいなさそう…?
「…だって」
こんなこと、言えるわけないじゃないか
メールで伝えてもこうして勘違いで戻ってくるくらいだから本当のことなんて言えるはずがない
いじめられてる人を助けたいなんて、自分からいじめられにいくようなものだと怒られるかもしれないし…なにより、心配かけたくなかった
「……母さん。メールはごめん、俺の説明不足だった。けど先生と話してわかった…よね?」
「ええ。お母さんも先生達にお願いしますって言ってきたわ」
それを聞いてほっとした。きっと俺より先生達の方が説明出来てるだろうし
ふふ、と笑いながら突然母さんは坂崎の方を見てにこりと笑う
「初めまして。坂崎君…だったかしら」
「っ、はい…」
初めての人だからか、少し後ずさりして震えてる
「そんなに怖がらないで。うちの息子が迷惑かけてないかしら」
「っ、ちょっと母さん…」
いきなりの言葉に思わず口が出てしまった
「…いえ、ぼくがわるいんです…巻き込んで、ごめん、なさい」
ぽろぽろと泣き出してしまった坂崎に、俺は母さんを睨んだ
それを知ってなのか知らないでいるのかわからないけど母さんは坂崎の頭を優しく撫でる
「坂崎君。ごめんなさいが言えるあなたをいじめる人のこと、これからは気にしないで生きていくのよ」
「…っ」
「いつまでも気にしていたら今の自分のまま。だけどここには優しい人がいるし一緒にいてくれる人がたくさんいるわ。だから、いつかもう終わったことだ、気にしなくていいんだって思える日が来る。友達がそうだったの。でももう今では結婚もして友人にも恵まれてる。だから坂崎君はこれが全部と思ってはダメよ」
優しく抱きしめる母さんは、まるで先生のように見えた
「…ありがとう、ございます」
「ふふ、やっぱり可愛いわ。それにとても良い子。いつかまた会いに来るから、今みたいに少しだけお話してくれる?」
「………ぼくで、いいのなら」
「もちろんよ。うちの息子がどんな生活してるのかも気になるし」
「な! 別に普通だし」
飛び火した気がして怒れば冗談よ、と笑った
「蒼太。確かに大丈夫だったわね。でもあんたが全力で見つけた場所なんだから、強がって抜け出したら飛んできて一発殴るわよ」
そう言って部屋から出ようとする。…時間切れらしい
「…待って、母さん」
いつも言葉は少ないけど、それでも来てくれて嬉しかった
「あ、ありがと…俺、今すごく幸せだから。安心して、仕事頑張ってね」
久しぶりに見た母さんは変わってなかった
仕事頑張ってね、いつも見送るときに言っていた。笑ってくれたり、泣きそうになったりもしてたけど俺はこれしか出来ないから
「ありがとう、母さん頑張ってくるね。何かあったら連絡してちょうだい」
頑張ってと応援されてるような気がして少し涙が出た
「もう行きますね。お邪魔しました」
玄関で言う母さんを四人で見送る。明日すぐ戻らないといけないらしい
「坂崎君、蒼太のことお願いね。無理しちゃだめよ」
はいと頷くのを見てにこりと笑った
「先生方、どうかこれからもうちの息子をよろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げて言うと、はいと二人は言ってくれた
「蒼太。ここ、大事にするのよ」
「…うん、母さんも頑張ってね、父さんによろしく言っておいて」
突然来た母さんはまるで嵐のように去っていった
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