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新しい場所、家、自分の部屋。全部が新しくてまだ落ち着かない
ずっと僕の居場所は寮の自分の部屋とあまり覚えてないけど達也さんの家だけだった。狭くて本があって、ほとんど家じゃない場所
今は、自分の家で部屋がある。不思議な感覚
「ただいま」
ガチャと居間のドアが開いて達也さんが帰ってきた。疲れたような顔をしてるから忙しかったんだと目を細める
「…おかえりなさい」
「蒼太と明良は?」
居間がしんとしてるのに気付いたのか、不思議そうにしながら真剣な目で聞く
「え、と…二人とも買い出し行ってる」
僕と達也さんと蒼太と明良さん。今、この四人で暮らしてる
なんでかは説明するのが難しいけど、一応家族でみんなもそう思ってくれてるはず
引っ越した僕達はこの新しい場所に慣れるために散歩したりしていた
今もそう。蒼太と明良さんは買い物に行きながら少しずつ覚えてるみたい
「祐は一緒に行かなかったのか?」
確かに僕も本当なら一緒に行くべき、なんだと思う
「家なのに、誰もいなかったら嫌だと思った、から」
疲れて帰ってきたのに誰もいなかったら、きっと寂しいんじゃないかな
達也さんは大人だからそんな風に思わないかもしれないけど
「ありがとう。今度二人で行こうか」
「休みなのに、いいの?」
「ああ。俺もまだ迷うし、不便だろ。何あったときに駆け寄れる場所も確認しておかないといけないしな」
そう言って笑うのを見て、僕も笑う
まだここに引っ越してきて一ヶ月くらいしか経ってない
自分の仕事とか学校で最低限の場所しかみんな覚えてなかった
ようやく少し落ち着いて、二人は先に行ってしまったけど
「達也さんと一緒って久しぶり、かも」
達也さんは小さな病院の担当医になった。夜まで働いて、たまに帰ってこない日もある
帰ってきてこうしておかえりって言うと嬉しそうにしてくれるから…喜んでくれてるのかなって
でもまだ少し不安
「ただいまー。あ、達也帰ってきてる」
ばたばたと玄関から聞こえて二人が帰ってきた
「ただいま…祐、達也さん」
蒼太も少し疲れた顔してる
「はぁー結構まだ迷うなー。ただいま、二人とも」
桜井さんはそうでもない…かもしれない
「蒼太。お前まだ調子良くないんだからあんま無理すんな」
蒼太は、前の学校のことと僕のことでのショックがまだ身体に残ってるみたいで達也さんにあまり無理をさせないようにと言われていた
こんなに助けてもらっていたのに僕のせいだって気付くのも遅かった
「…そう、た」
「なに?」
にこりと笑って、僕のところに来てくれるのに目が見れない
蒼太は僕を責めなかった
無事でよかったってむしろ泣いてた。自分の方が、大変なのに
「…なんでも、ない。早く寝てね」
支えることすら出来ない僕が何したってきっと、蒼太にとっては無駄なこと
「祐?」
せっかく引っ越してきてみんなと一緒に暮らしていても変わったのは、周りとみんなで、僕は多分何も変わってない
それが最近すごくわかってきた
僕だけ、どこか、なにか、違うんだ
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