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新しい恋、ごちそうさま
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久住に声をかけてきたのは、ハーフアップに剃り込みを入れた派手なルックスの男だった。
くだけた口調で話す彼とは面識がある。
久住が多希のエプロンを借りるきっかけをつくった三好という、料理教室の社長だ。
「入会してくれてありがとうねー。男の生徒さん少ないから嬉しいよ」
「あ、はい。こちらこそご迷惑をお掛けするかもしれませんが、よろしくお願いします」
きっちりと腰を深く折る久住の頭上で、「堅いね」と笑う声が降りかかった。
「多希くんの講義受けてみてどうだった? 何でも気になることあったら遠慮なく言ってね」
「多希くん……」
初めて会ったとき……ほんの数分のやり取りだったが、多希と三好の会話はやけに親しげだった。
雇い主が社員を名前で呼ぶほどに。
久住の勤め先は全員男女も役職も関係なくさん付けを推奨しているので、驚くと同時に複雑な気持ちにもなる。
「あっ、由衣濱 多希ね。下の名前が多希くん」
「はい。存じています」
少しむっとして言い返すようになってしまった。
「多希くんねー、久住くんのこと褒めてたよ。すごく努力家で頑張ってますって」
「え……? ほ、本当ですか?」
「うん。もうベタ褒めしてたよー! あ、もしかしてそれ。わざわざ返しに来てくれたの? ごめんねぇ。ありがとう」
「いえ。こちらこそありがとうございました」
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