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回転の悪い頭による失言
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「やだやだやだっ。僕は、ここに居たいの。あんたの傍に居たいのっ」
ぶんぶんと頭を振るったフリックは、くるりと身体を反転させ、再び俺の腿の上に舞い戻ってくる。
膝枕状態に戻ったフリックは、んふふとご機嫌な笑みを浮かべる。
「ここに居たいなら、ナイフか銃……、格闘術でもいいから、自分の身くらい守れるようになれ」
ぺしりと額を叩く俺に、フリックはあいたっと肩を竦めたが、そこを押さえるだけで、膝上からは退かなかった。
くくっと詰まるような笑い声が、俺の耳に届く。
2階へと続く階段に向けた瞳には、にんまりとした笑みを浮かべる誓斗が映る。
「懐かれちゃって、大変だね?」
水分補給に降りてきたであろう誓斗は、そのままキッチンへと向かう。
誓斗が纏う空気には、揶揄いの色が滲んでいた。
白い目を向ける俺の頬が、フリックの両手に挟まれ、ぐいっと顔の向きを変えられた。
「こっち見て! そんな可能性も希望もない人より、こっち見て!」
「うるせぇ」
頬を挟むフリックの手を剥がし、捨てるように放った。
グラスを手にキッチンから出てきた誓斗は、高みの見物でもするかのように、横目で俺たちを見つつ、水を呷る。
フリックは、俺が無駄に誓斗を想い続けているコトを知っている。
家に住み着いて2週間ほど経った頃。
外が微かに明るさを帯びてくる時間帯だった。
ベッドで眠っていた俺の足許で、何かがもぞりと蠢いた。
反射的に、枕の下にある銃を手に身体を引き起こし、盛り上がる掛け布団に銃口を押し当てた。
「ままま、待って! 僕! フリック!」
触れた銃口の先が、布団越しの震えを伝えてくる。
俺は、ゆるりと銃を退けた。
入ってきた時の軌跡を辿り、ずるずると後退し、床へと戻ったフリックは、ベッドの端に両手と顎を乗せ、俺の顔色を窺う。
「なんのつもりだ?」
苛立ちを隠さず詰める俺の瞳には、しおしおと悄気ていくフリックの姿が映る。
「処理してあげようと思って……」
布団で隠れる俺の股間辺りを見やりながら紡がれた言葉に、盛大な溜め息が口を衝く。
「間に合ってるって言っただろ」
疲れと呆れが交ざりあった声を発する俺に、フリックの眉が八の字に垂れ下がる。
「女の影もなくて、ヌいてる素振りもないのに? ……絶食系?」
それは、恋愛に興味のない人間に対して使うものであって、性欲の話じゃない。
それに。
「絶食じゃねぇよ。誓斗の相手してたら、溜まるヒマなんてねぇだけだ」
起き抜けで、頭が回っていなかった。
そんな俺は、言わなくてもいいコトを口走っていた。
口を滑らせてしまったと気づいた瞬間(とき)には、フリックの視線が、誓斗の寝室の方向と俺の顔を何度も往復していた。
「あ、え? …え?」
フリックの反応に、俺はガリガリと頭を掻くしかなかった。
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