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この世にたった独りだけ
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遠慮するのが当然だ、と。
常識人としてそれが当たり前だ、と。
こんないびつな関係は、白紙にするべきだ、と。
……世の中の大多数がそう思うものだろう、と。
でも。恋愛に、正解などありはしない。
多数決など、存在しない。
どんなに、苦しかろうが。
どんなに、ひしゃげてようが。
どんなに、報われなかろうが。
俺の根底にある感情は、たとえ天変地異が起きたとしても振り向かないであろう誓斗への救いようのない想いだけだ。
俺の心を揺さぶれるのは、この世にたった独り、……誓斗だけ、なんだ。
俺の思いなど、報われなくて良い。
誓斗が唯愛への想いを捨てきれないように、俺も誓斗への愛を捨てられないだけだから。
俺が誓斗を欲しているのに、フリックへの遠慮で断られるなど、納得できるはずもない。
無駄に俺を拒否する誓斗の耳殻に、歯を立てた。
「引くな。あんたは、あんたのままでいい。あんたの思う通りに、俺を喰らえよ」
痛みを生むくらい強く噛みついて、その傷を労るように舌を這わせる。
「どんなに責められても、どんなに優しくされても、オレはお前に惚れねぇよ」
耳許にある俺の頭に手を伸ばした誓斗は、柔らかく髪を握った。
「知ってる。それでいいって言ってんだろ。俺は唯愛の代わり。淋しい身体を慰めるだけの代用品。それでいいんだよ」
耳の下から首筋、鎖骨へと唇を這わせる俺に、髪を握っていた誓斗の手が開かれ、まるで慰めるかのように、頭を撫でられる。
「……好きだから」
意図せず零れた俺の言葉に、誓斗の指先が、ぴくりと反応した。
「好き………ね?」
好きならば、なおさら。
自分は身を引くべきなのではないかという誓斗の優しさが、その指先から伝播してくる。
「あんたの身体が、ね」
慌て付け足した文言は、俺のなけなしのプライドだ。
願っても手に出来ないものならば。
その願いが幸せにしたいと思う相手を苦しめるものならば。
……俺は、きちんと心の内に封印する。
多少はみ出てしまっても、そのくらいのカッコつけは、気づかないフリでやり過ごしてくれと願った。
「あっそ。なら、好きにすればいい。お前が満足するまで、喰らえばいい」
俺に腕を捕まれたまま、デスクへと向かった誓斗は、軽やかにそこに腰掛けた。
伸びてきた誓斗の足が、向かい合う俺の腿の間を擽る。
やる気を推し量(はか)るかのように、俺の股間に撫でつけられる脛は、ひりひりとする痺れた刺激を生んだ。
「俺が満足したいんじゃなくて、あんたを空っぽにしてやりたいんだよ」
なにも考えられないくらいに。
唯愛を想い、心を痛める隙もなくなるほどに。
ぞわぞわと胸を擽る興奮に、1歩だけ後退した俺は、誓斗の足許に跪く。
スラックスの裾を引き上げ、露になった脛に唇を落とす。
脛へのキスは、服従の証だ。
誓斗が気づいていなくとも、俺はこうして愛を注ぎ続ける。
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