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episode 2
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昨夜の飲み会は、懐かしい仲間が全員集合したせいもあり、以上な盛り上りを見せていた。
「じゃあさ、ジャンケンして一番負けた奴が、この中から一人相手を選んで、ほっぺにチュウしようぜ!?」
「マジかぁ!?きっついなぁ!」
「いや、漢ならやろうぜ!」
「もしかしたら、女子に当たるかもしれないしな!?」
「ヤダヤダ、気持ち悪い!キャハハハ!」
完全に酔っぱらいきっている俺達は、誰からともなく言い出したこの罰ゲームに、意図も簡単に食いついた。
口では「嫌だ嫌だ」と言いながらも、やっぱりこの手の罰ゲームは、飲み会ではお約束で……盛り上がりは最高潮となっていく。
女子も女子で、嫌だと言う割には満更でもなさそうだ。
「よぉし!行くぞ!」
「ジャンケンポン!!アイコでしょ!!アイコでしょ!?ショッ!!ショッ!!」
何回かアイコを繰り返し、嬉しそうな歓声の後、その場にいる仲間の視線が自分に集中したのを感じた。
「罰ゲームは桔平(きっぺい)に決定ー!!」
「イエーイ!!」
みんなが嬉しそうに拍手をするもんだから、あまりの他人事ぶりに大きく息を吐いた。
仕方ない。
ここで俺が拒否をすれば、場が白けてしまう。
「じゃあ、桔平君。チュウする相手を選んでください!」
異様に嬉しそうなみんなに、若干イライラしながらも、
「しゃーないか」
俺は腹を決めた。
と言うか、このゲームをするって決まった時から、もし自分がキスをすることになったら『こいつに協力してもらおう』っていう相手は決まっていた。
別に、深く考えてたわけじゃないけど、こいつが一番身近な存在に感じられていたから。
それに、こいつとならキスしてもいいかな、とさえ思えていた。
「碧、悪ぃ。ちょっとキスさせてくんねぇかな?」
さっきから、「自分には関係ない」と言わんばかりにニヤニヤと笑っている碧に声をかける。
「え?俺?」
碧がビックリしたように元々真ん丸な目を、更に見開きながら、自分を指差す。
「そう、お前」
その瞬間、「マジかー!?」とその場が黄色い悲鳴で包まれた。
「やっぱり、桔平は碧を選ぶと思った!」
近くにいた仲間の言葉に、
「はぁ?やっぱりってなんだよ」
つい眉を顰めた。
「ま、想像通りだわな」
他の奴らまでふざけたことを言い出すから、ちょっとイラついてしまう。
「碧、こっち来て」
さっさと終わらせようと、碧の腕を強引に掴んで自分に引き寄せた。
「え?ちょ、ちょっと……」
明らかに狼狽えている碧なんてお構い無しに、案外細い腰に腕を回す。
今思えば、なぜ俺は迷うことなく碧を選んだのだろうか。
仲がいいから?
一番、気心知れた仲間だから?
普段からじゃれ合いをしているから?
「じゃあ、碧。キスするからな」
「はい、どうぞ」
俺との過剰なじゃれ合いに慣れっこの碧は、顔色一つ変えずに頬を俺に向けた。
大学生になってまで、まるで猫がじゃれ合うかのようにふざけあってるのに……。
何だか変な感じがする。
「キス、するからな」
「だから、どうぞって」
そうじゃない。そんなの、自分が一番わかってる。そう、俺が碧を選んだのは……。
下心があったから。
軽く碧の頬にフニッと唇を寄せて、そっと離れた。
「ギャーーーーー!!」
その場にいた友人達の嬉しそうな悲鳴が、遠くで聞こえた気がした。
友達の中でも顔が良くて、スタイルもいい。そして、中性的な雰囲気を持っているし、何より仕草やちょっとした表情がメチャクチャ可愛い。
それは長年一緒にいる俺でさえ、ドキドキすることがあるくらいだ。
幼い頃から、いつも隣にいる碧を見つめ続けていた俺の中に……いつの間にか、芽生えていた不埒な感情。
ずっとずっと忙しくて、彼女を作る暇さえなかった。だけど、誰かとセックスしたいっていう欲求は常に心の奥底にあった。
無意識に、性的な目で碧を見ていたのかもしれない。
そう、明らかな下心。
俺は、いつの間にか碧に、隠しきれない下心を抱いていたんだ。
「ごめんな、碧。お前を選んじまって」
そっと頬を撫でれば、クリクリッとした瞳が、好奇心で満たされる。まるで、悪戯を思い付いた子供のように笑った。
「桔平の唇、プニプニしてて気持ちいい~!」
「はい?」
碧が俺の唇を引っ張りながら、ニコニコしている。
「桔平の唇、こんなにも柔らかいんだね」
あまりにも強く引っ張るもんだから、痛くて思わず碧の腕を掴んだ。
「碧、碧!痛いって!」
「だって、プニプニして気持ちいいんだもん」
あまりに無邪気に笑うもんだから、つい抵抗する手を緩めてしまう。
結局、俺はこいつには勝てないんだ。
「碧、今度は唇にしてよ」
「……は?今、なんて……?」
碧が、あまりにも自然にいった言葉に、思わず息を飲んだ。
何を言われたのか、理解できなかったから。
「お願い。唇にキスして?」
「な、なんでだよ?」
「せっかくなら、ちゃんと唇で桔平の唇を堪能したいもん」
「……碧……」
こいつも相当酔っぱらってるんだろうか?それとも、見た目によらずビッチとか……?
「だって、みんながいるんだよ?」
動揺しすぎて、情けないことに声が震えた。
「みんながいなければいいの?」
「……えっ、えっと……う、うん」
「わかった」
最後に碧が俺に急に抱きついてきたら、思わずその体を受け止める形で抱き締めた。
その瞬間、俺にしか聞こえないような小さな声で甘く囁いた。甘くて低い声は、まるで媚薬のように俺の体を駆け抜ける。
「じゃあ……二人きりになったら、ちゃんと唇にキスしてね」
「わ、わかった」
「いつまでイチャイチャしてんだよ!?」
痺れを切らした仲間が、碧を連れ戻しに来る。
碧ははにかみながらも、定位置に戻って行ってしまった。
碧が離れていってからも、俺の心臓はバクバクと雷みたいに鳴りっぱなしだった。
下心が疼いて仕方ない。
それと同時に、そんな疚しい目で碧を見てしまっている自分に、酷く失望してしまった。
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