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第二話 開花(二)
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「拭くぞ。冷たいぞ~」
「んにゃ……」
そーっと立珂の背にぺたりと布を当てると、寝ぼけ眼だった立珂は水の冷たさに驚いてぴょっと跳ねるように震えた。
「ちべたい!」
「もっかいだ!」
「ひゃあああ!」
ようやく目が覚めた立珂はきゃっきゃと笑って、水の冷たさにまた震えた。
「よし。終わり。薬塗ろうな」
「もうかゆくないよ」
「でも塗っておかないとぶり返すんだってさ」
羽が重くて歩けない立珂だが、別の理由からも意図的に運動を避けていた。それが皮膚炎だ。
羽は保温性が高い。少し動くだけで熱が籠り、たちまち汗疹になり掻きむしれば皮膚炎が広がっていく。羽の接触と衣擦れでも炎症を起こす事も少なくない。だから立珂はあまり動きたがらないのだ。
しかしそれも今は鳴りを潜めた。孔雀が薬を用意してくれて、十六年間苦しんだ皮膚炎をひと月もしないうちに治してくれたのだ。それでも常に羽を背負っているため皮膚炎は慢性的で、毎日こうして薬を塗っている。
「薄珂の手きもちいい」
「立珂のお腹もぷにぷにで気持ち良いぞ」
羽が触れるところはどこもかしこも皮膚炎だ。お腹にも薄っすら皮膚炎が広がっていて、薬を塗り広げていくと立珂はくすぐったそうにきゃあきゃあと笑った。寝起きからこんなにはしゃぐ明るい声を聞けるのは幸せそのものだ。
幸せを噛みしめんがらじゃれあってていると、こんこんと玄関扉を叩く音が聞こえてきた。
「薄珂君、立珂君。少しいいですか?」
「孔雀先生だ。はーい!」
薄珂は立珂の頭を撫でると、薬瓶を置いて扉へ向かうと鍵を開けた。そこには孔雀と、後ろには昨日救助された兎獣人が男いた。
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