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第二話 開花(三)
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「あんた昨日の」
「出血のわりに浅い傷でした。それで二人にお詫びをしたいと」
孔雀が一歩横にずれると兎獣人の男が一歩前に出て来た。白い髪の毛は青空に漂う雲のようにふわりと漂い、陽の光をきらりと跳ね返している。その美しさは魅入らずにはいられない。
「天藍(てんらん)という。昨日はすまなかった」
「いいよ。警戒する気持ちはよく分かるし」
「だが服を駄目にしただろう。その詫びをさせてくれ」
天藍は手に持っていた物を差し出し中に入ろうとした。けれど横目に立珂がびくりと驚いたのが見えて、薄珂は思わずその手を払いのけた。
「入るって来るな!」
「うおっ」
薄珂は天藍の手を叩き除けた。森を追われて以来、立珂はちょっとしたことで不安を覚えるようになっていた。金剛と孔雀にも小屋へ入るのは遠慮してもらっている。立珂が歓迎するのは唯一慶都だけだ。
薄珂は立珂に駆け寄りぎゅっと抱きしめた。天藍は持っていた物を落としてしまい吃驚したようだったが、すぐに何か悟ったのか、天藍は膝を付き薄珂と立珂に目線を合わせて頭を下げた。
「驚かせてすまなかった。ただ服が気になってな。有翼人用の服を知らないんじゃないか?」
「有翼人用の服?」
天藍は孔雀を見上げると、孔雀が床に散らばった物を拾い持って来てくれる。
「天藍さんは商人だそうです。私も見せてもらいましたがとても良い物ですよ」
それでも立珂は手に取らず、代わりに薄珂がおそるおそる受け取り広げた。それは袖の無い子供用の衣だった。しかしぽっかりと大きな穴が開いていて服とは言い難い。見た事の無い形状に薄珂と立珂は首を傾げた。
「変な形。それに布が薄い」
「それが有翼人用だ。通気性が良くて羽接触による皮膚炎も予防してくれるんだ」
「え!?」
「伸縮性があるから身体に沿う。衣擦れで皮膚炎が悪化することもない。着てみてくれ」
聞く限りでは興味惹かれたがやはり迷い、しかし孔雀は微笑み頷いている。薄珂はじっと服を見つめてから立珂を見ると、興味深そうに見つめていた。
「立珂。着てみるか?」
「けど穴あいてる。おなか出ちゃうよ」
「そっちが背中。そこから羽出すんだよ」
「う?」
立珂はしばらくはじろじろと訝しげにしていたが、とうとう服を手に取り弄り始めた。
「釦いっぱい付いてる」
「肩と脇を外せば前後の二枚に分かれるぞ。前は飾り釦だからそのままでいい」
「……う?」
釦は片肩に二個ずつで両肩合計四個、片脇には縦に三個で両脇で合計六個が付いている。それを全て外すと確かに二枚に分かれた。
「着ながら釦を止めていくんだ」
「う? う?」
「あ、分かった分かった。こっち来い立珂。やってやる」
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