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第四話 車椅子(二)
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服は上下に分かれている。衣の丈は腰骨ほどで、下は飾り気のない裳だ。裳は筒状ではなく一枚布を巻きつけているだけのようで、捲れて床に垂れている。けれど立珂の脚にはまだ布があった。丈はふくらはぎほどしかなく皺くちゃになっている。
「下のそれ寝間着か?」
「そうだよ! こうしたの!」
立珂は腰の釦を外すと、上半身を必死に動かし寝台へ広げた。んしょんしょと伸ばすとその上にころりと転がり、腰辺りで再び釦を止める。立たずして転がる事で布を巻き付けたのだ。さらに裾を持ち上げると、下の布と上の布の内側にある釦を止めた。これは布の端ではなく少し内側に付いているので、裾はひらひら揺れて固定してるようには見えない。完全な着替えの完了だった。
「……凄いぞ立珂! 凄い! 凄いじゃないか!」
「えへへ~。上と下が別々なのって普通はあんまりないみたいだけど、上の裾に模様が付いてるのお洒落だと思うんだ。おなかとせなかは白い生地だけど、裾と襟だけ地模様の生地だとまとまりが良いの。上だけ豪華な生地でも良いと思うんだ。下は模様無しで大きな刺繍だけ入れるとも素敵だと思うの。後でおばさんに刺繍のやり方教わろうと思って」
「え、な、何だって?」
「お洒落にするんだよ。薄珂は赤が似合いそう!」
突如饒舌に語り出し、その意味がほとんど分からず薄珂はぽかんと口を開けた。
薄珂も立珂も、一般的な常識や知識に乏しいというのは里に来てよく分かった。けれど学ばなければ生きられないわけでもないし、そんなことより立珂がどう過ごすかの方がずっと大切だ。だから別段勉強しようなどとは思わなかったし、考えることと言えば慶都と遊べるものを増やすことくらいだ。
けれど今立珂が語ったのは明らかに今までにない知識だ。薄珂は聞いたこともないし考えたことすらない。
「立珂、いつの間にそんな難しいこと勉強したんだ?」
「う? してないよ。ただその方がお洒落だと思って」
「……自分で考えたってことか?」
「うん。だってお洒落だもの! どの色をあわせるかはとっても大事だよ!」
立珂はえへんと誇らしげに笑みを浮かべた。着ている服のお洒落さは間違いなく誇って良い仕上がりだ。里の住民だってこんなに組み合わせを凝らしたりはしていない。
薄珂は初めて立珂のお洒落さを実感してぶるりと震え、飛びつくように抱きしめた。
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