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【三歩】-2
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幸平はゆっくりと目を開けた。しかしそこにはさっきまで感じていたような眩い光はなく、それどころか隙間のない黒が延々と広がっていた。
先の見えない闇にそっと手を伸ばしてみたが何も感じない。幸平は全身が粟立つのを感じた。一気に不安が押し寄せ身震いする。
ここはどこ?何で何も見えない?
夢じゃないのは肌で感じる。それでもここがどこだかわからない。誰かに助けを求めなければと思うも、何と叫べばいいのかわからない。
幸平は胃が気持ち悪くなるのを感じて膝を抱えた。何かが我先にと蠢くように喉までせり上がってくる。しかし実際は何も出てきやしないということも頭の片隅ではわかっていた。
「気持ち悪いのか?」
背中からきこえた声に首を振る。本当は気持ち悪い。だけどそれをこの人には知られたくなかった。
「目隠し取るぞ」
今度は小さく頷いた。
視界にうっすらと明かりを感じ始める頃には、この声が誰なのか幸平はしっかりと思い出していた。
「大丈夫か?」
相手を労わる優しい声に、この人の中ではまだ腕の中にいるのは町田幸平という人間ではないのだと実感する。そして自分も……
「ああうん、すごくよかったよ、ゆ……」
――ユキ。
最後の名前だけは誰にも気づかれないようにそっと心の中で呟くと、幸平は背中のぬくもりをもっと近くに感じるように、腰に回された手をぎゅっと握った。
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