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【三歩】-30
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何秒経過したかなんて数えていない。しかししばらく待ってもきこえてくるのはガサガサといった雑音ばかりで、男がなにをきかせたがっているのか予想すらできないまま、幸平は止めていた息を吐き出した。
「もう少し時間かかるから、今の内に幸平くんも準備をしておこうか」
どうやらこの時間すら計画の内だったようだ。幸平が窺い見ると、男はさっきと同じ鞄からジップのついた袋を取り出した。
中にはオブラートらしきものに包まれた白い粉が幾つか入っているのが見える。それが一体何なのか説明されずとも、嫌な予感だけはひしひしと肌で感じ取ることができた。この状況で男が飲ませようとするものなど、百歩譲ってもろくなものじゃないに決まっている。
幸平はオブラートの包みを口の中に押し込まれそうになって、激しく頭を左右にかぶった。子どもが駄々をこねるよりも必死に抵抗したと思う。けれど拘束されている状態では二進も三進もいかない。
男に顎を掴まれ、強引に口を開かれれば、もうどうすることもできなかった。その上ペットボトルの水を流し込まれ無理矢理口を閉じられれば、否応なく嚥下せざるを得ない。
幸平の喉が上下するのと、スピーカーからやけにクリアな音がきこえてきたのとは、ほぼ同時だった。雑音ではなくなったものの、やはり始めはなんの音なのか幸平には理解できなかった。
しかし人の気配や息遣い、それに衣擦れの音が混じってくると、次第にそれが幸平にも身に覚えのある音だということがわかってきた。少しずつ冷静でいられなくなくなっていく。間違ってもこんな状況できくようなものではない。
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