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【三歩】-34
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男がやってきた頃には、幸平は汗と唾液と自身の放った精液と汚物にまみれてぐちゃぐちゃだった。
バイブはいつしか抜け落ちていたが、男が幸平の身体を触るとその刺激を待っていたかのように激しく痙攣を起こした。反射的に開いたその瞳には何も映っておらず、男がレコーダーを切ると、心の均等が取れなくなって、幸平は言葉にならない声で喚き散らした。
このままでは埒が明かないと判断したのか、男はビニールのシートと一緒に幸平を風呂場に放り込んだ。再びレコーダーからは音声が流れ出す。
風呂とトイレは別がいいというのは、部屋選びのときに幸平が提示した唯一の譲れないポイントだった。広くはなくても、疲れたときに湯船に浸かるのが好きで、時々は長風呂を楽しんだ。
二人暮らしを始めて、風呂掃除は幸平の仕事になった。その代わり洋之はトイレの掃除を担当した。そんな他愛無い思い出が走馬灯のように流れては消えていく。
考えることを放棄した幸平の頭にシャワーのお湯が勢いよく噴出した。乾いていた浴室がみるみる湯気で真っ白になる。鏡も曇って、自分の姿が風呂場から消えていくのを、幸平はぼーっと眺めていた。
しばらくして裸になった男が風呂場にやってくると、扉が開いたせいで急激に視界が開けていった。再び姿を現した鏡の中の自分に幸平は肩を落とした。現実がずっしりと、その両肩にひしめき合ってのっている。
「これをスニッフするといい」
男はいった。
「スニッフ?」
「鼻から吸うんだよ。そしたらまた気持ちよくなれる」
男が差し出したのは紙にのった白い粉と細いストローのような筒状の棒だった。幸平はいわれるまま顔を近づけた。それは誘惑だった。扉の外からきこえる洋之の声に耳を澄ませる。これでまた洋之とひとつになれる、そう思った。
幸平は粉を吸った。慣れない異物感に思いっきりむせたが、悪い気分ではなかった。幸平が吸い終わると男は目を細めて幸平の髪を撫でた。いつになく優しい手つきだった。
身体を洗われ、再びベッドの上へと移動する。今度は拘束もされていないしひとりじゃない。男と二人。枕元にはスピーカーもあって、地獄のような天国の時間がまた始まる。
幸平は夢心地で目を瞑った。男の体を招き入れれば、さっきまでの無機質な道具と違い、熱量を感じる男の圧迫感に激しい愉悦を感じた。もちろん幸平の耳にはスピーカーから流れる洋之の声しかきこえていない。これは洋之。そう自分にいいきかせながら幸平は無我夢中で男の怒張した性器を咥え続けた。
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