アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
【二歩】-19
-
一通り説明し終わってから宮原の顔色を伺う。宮原は顎を撫でながら「面白いですね」と興味深気に呟いた。
好印象だったことにほっとしながら「ぜひご検討ください」と頭を下げて、洋之は話を締めくくった。
「そうですね、持ち帰って何かに使えないか、デザイナーとも相談してみます」
「よろしくお願いします」
「ところで……」
宮原の切れ長で黒い、でも幸平ほど鋭さを感じさせない瞳が遠慮がちに洋之を覗いた。胸の高鳴りを抑えながら洋之は「なんでしょうか?」と宮原にきき返す。
「さっきの話なんですが……その、僕に似てる方がいるって」
「えぇ」
「やっぱり気になってしまって……すみません、話しづらいことだったりするのかなとも思ったのですが……どうでしょう、今度仕事ではなくその方のお話をきかせてはもらえませんか?こんなことをいうのも変なんですけど、町田さんとはなんだか初めてお会いしたような気がしなくて。とか……はは、ちょっとおかしいですよね。これじゃあ一昔前の口説き文句みたいだ」
それは洋之にとっては願ってもいない申し出だった。宮原の反応は悪くなかったが、だからと言ってこれで仕事が決まるとは限らない。洋之としても今日の一回きりで宮原との縁が切れてしまうのは避けたいところだった。幸平に似たこの人のことをもっと知りたいと思っていた。
「いえそんな。嬉しいです……っていうのも気持ち悪いですよね。はは、いやでもこっちに転勤してきてから、同僚以外に話をできる人もいなかったのでお誘いいただけたのは本当に嬉しいです。ありがとうございます。面白い話題はあまり持ち合わせていませんが、宮原さんにはぜひ私の話をきいていただきたい」
「転勤――そうでしたか。町田さんは最近こちらにいらしたんですね。それは不便なことも多いでしょう。僕でよければお話伺いますよ。こう見えてよく相談事とかされるんです。まぁまともなアドバイスなどした試しはないですけどね」
戯けて肩をすくめる姿は愛らしい。幸平にこんな愛嬌はなかったと思うも、そんな宮原から洋之は目が離せなくなっていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
57 / 84