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鍵と錠前の役割についてSS1
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水母の骨を探せ!!(仮) SS
…畜生。押し倒してぇ~…っ!!
この世には、第二の性別が存在する。
男女とは別に、『扉』というものがある。
これは、人口の約四分の一に当てはまる。
性別問わず、『扉』は当てはまる。
そのメカニズムは謎に包まれているが、現在研究で把握されているのは以下のとおりである。
『扉』は二種類に分けられる。
『錠前』と『鍵』である。
『錠前』は、一般人より秀でた力を持っているが、そのため複雑な事情を持つ者が多くあり、生まれながらの『錠前』としての性格もあり、他者に心を開かないものが多い。
『鍵』は、一般人とそう変わらないが、『錠前』と少しでも肌を合わせると、彼らを発情させ、基本的には本心を聞くことが出来る。半強制で、素直にさせられるのだ。
また、『鍵』と『錠前』は二種類の人間がいれば、『鍵』が『錠前』から本心を聞き出せるのかというとそうではない。
それぞれに決まった『鍵』と『錠前』があり、運命的に惹かれ合った二人にしか、その本質は発揮されない。
よって、一生の内で運命の『鍵』や『錠前』に出会う頻度は低く、大方の人間が自分を『鍵』や『錠前』であったことも忘れて、その一生を終える。
…はずなんだよな、とオレ・一ノ瀬拓真は考える。
短く刈り上げた髪に、女子を視ようもんなら叫び声をあげてどっかに行ってしまう強面。トドメに、末恐ろしいほどちょっと眼力込めただけで睨んでいるように見えてしまう、釣り目。
身長百八十後半。水泳やって筋肉ついてっから、ガタイは良い方だ。声も無駄にデケェって怒られるくらいだし、中学一年ン時の第二性別判定で『鍵』だったわけだけど、そんなん抜きでずっとオレ一生彼女出来ないんじゃね??って考えていた矢先。
…出会ってしまったわけだ。オレの『錠前』と。
そこまで思考してから、高校の廊下をオレの目の前で競歩の速さで進む、小柄な先輩に目を向ける。…オレの視界で、さっきっからその先輩の見事な黒髪ポニーテールの一房がリズミカルに左右へと揺れていた。
「…紬、先輩。」
海原紬先輩。水泳部OBであり、オレがずっと憧れ続けていた選手。
身長は百六十後半と、選手にしては小柄で華奢。ちんまりしていて、小さい頃から筋金入りの童顔だから、オレと同い年ですって紹介してもすんなり受け入れられそうだ。
ところが、この小さい体躯からは信じられないほど、水中では動く動く。
ついたあだ名が、“人魚騎(マーメイド)”。姫が騎士の『騎』なのは、そんだけバカ強ェってことだ。
でも、本当、その容姿から水泳の実力が信じられないくらい、清楚な上に愛らしい。
今日だって、制服の白いシャツを着ているわけだが、狭い肩の筋肉が一生懸命隅々まで動いている様だとか、薄い生地の下で蠢く肩甲骨が、まるでオレに骨までむしゃぶりついて、と誘惑するようだ。…いかん、口の中がまた涎でいっぱいになってしまった。
黒いスラックスに包まれた、ほっそりとして、しかしその生地の下で動いているだろう引き締まった筋肉がついた両脚とか、最小限のモーションで微かに揺れる、臀部とか…。
ヤバい、自分で細かく描写しといて、クラクラしてきた。
そんな、オレにとってはマタタビみたいな存在が、首だけ振り返る。
「…なんだ??」
愛らしい容貌とは正反対の低く、渋い声。これが、一度肌を合わせると、あられもない声の高さにまで引き上げられて…。…いかん、オレ、煩悩に負けんな!!
「センパイ、疲れていませんか??肩揉みましょうか??」
「…いらん。」
凄い。にべもなく一蹴された。…でも、これでもかと顔を顰めて拒まれるのすらキュンとくる。流石、オレの運命。
「センパイ、じゃあ、御茶飲みます??オレ、校内の自販機で買ってきますよ??」
「喉渇いてないし。」
ズバッと言い切る先輩、めちゃくちゃカッコイイ…っ。
「センパイ、あの…っ!!えっと…。」
「…拓真。」
桜色の小ぶりなそのぽってりした唇で、名前を呼ばれると足先から髪の先までオレの身体は余すところなく痺れてしまう。うわあ、オレの先輩がオレの名前呼んでくれたよ~。みんな~!!今の聞いた~!?
先輩は立ち止まって、わざわざオレと向き合ってくれた。
「…言いたいことがあるなら、はっきり言え。時間の無駄だ。」
「ええっと…、えっと…。」
オレは、だらんと垂らした手を両拳にして、一生分の勇気を振り絞って言った。
「センパイに、触りてぇ…です!!」
「…どうぞ??」
先輩が大きく両腕を広げる。えっ??え…っ??ナニコレ、夢??
オレは喜んで…先輩をがっしりと抱擁する。
「ちょ…っ、拓真!??」
先輩の声が、驚きで裏返る。わぁ…。普段のクールな口調もいいけど、動揺が滲む声もまた麗しい…っ。
「…何スか。」
もう離したくない、と考えつつ、オレはぎゅっと彼を抱きしめるのに力をこめる。
「…ん…っ。」
先輩の常に凛とした姿勢が崩れ行く様と、感じてしまったのか、鼻にかかった吐息が色っぽくて…堪らない。
「触りたいって、もっとなんか他にあったろ!?手ェ握るとか、ほっぺつつくとか、いきなりこんなディープなの…っ!!聞いてないぞ…っ!!」
センパイは騒いでいるようだけど、オレは夢中で彼の肩口に口元を埋め、その匂いを全身の温もりを堪能する。
「言ってないッスもん…。嗚呼、ホント、センパイったらいい匂い…ッ」
夢中で肩口の匂いを吸引する。オレの腕の中で、センパイがたじろぐのが伝わった。
「ば…っ、バカ…!!わっ、私がつけている香水の匂いが好みなだけだろ??」
「…ちがうッス。」
細い腰を力任せに引き寄せてから、オレは耳元でそっと囁く。
「センパイ、香水ってね??その人の身体の匂いと相まって、その人だけの香りになるんス。だから、今オレが嗅いで悦んでいるのは…センパイだけの匂いなんですよ??」
「…ッ。いつまで人の匂い嗅ぎ続ける気だ、このヘンタイっ!!」
ドストレートな腹パンを決められ、オレは思わず身体を二つ折りにする。
「ぐは…っ!!」
苦痛に呻くオレを残して、先輩はスタスタと先に進んでいってしまう。
「ったく。少し甘やかしただけで調子に乗りやがって…。」
数mいったところで、先輩はぴたりと足を止め、背後を振り返る。
「…おい。その腑抜けた面、ちったぁ引き締めてから練習来いよ。」
プールに行くからついてこい、この私を待たせるようなら腹筋背筋それぞれ二十回の罰だからな、と飄々と理不尽の極みを言ってのけ、先輩はその場を華麗に去っていく。
オレはしばらく痛みを耐え忍んだ後で、片手で口元を押さえる。
「やべェ…。」
前傾姿勢になりつつ、校内を見渡し、近くの男子トイレを探す。
「完璧勃ったわ…。」
先輩…、と祈らずにはいられない。
…オレの性癖まで、そう簡単に歪ませないで欲しいものだ。
〈水母の骨を探せ!!(仮)SS おしまい〉
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