アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
復讐者の記録──壱
-
なにも今すぐ客を付けようってんじゃないと、女亭主が言う。良い物はしっかり磨いて高値で買わせる主義だ。
先ずはどんなものか見てみろと言われ、彼女の後に続いて少年は店の中に入った。
宿と言うよりは食堂だった。いくつも用意された机に5、6人の男のグループが3組、座って酒を飲んでいる。
給仕をしているのは若い青年達。給仕係が酒器を運び、席につく男達に呼び止められては何か囁かれている。
『 ぁひッ……ァァっ‥‥そんな… 』
『 おーおーもう出来上がってるなぁ。掴んだだけでおっ勃てて可愛いなぁ 』
『 や、ソコ…‥…‥‥ァ、ぁぁん…// ダメですそんな…ッ つよく、手、動かしちゃぁ……!! 』
『 こうか?コレがいいのか?気持ちよさげに悶えやがって…、ほら、イかせてほしいのか? 』
『 アアッ‥‥ひっ// 』
そして複数人に囲まれた給仕の青年が、赤い顔をして身悶えている。彼の下半身には男達の手がいくつも伸びていた。
『 ちょっとあんた達、勝手に始めるんじゃないよ!遊ぶんだったら宿代払ってそっちに行きな 』
『 ははは、女将は相変わらず厳しいねー。んじゃあそろそろ場所を変えるか 』
すかさず女亭主が止めに入ると、ひとりが笑って残りの酒を飲み干した。
『 俺はこいつにする、金は? 』
『 ここだよ 』
席を立った男は先ほどの青年の肩を持ち店の出口に近付いてくる。女亭主に金を渡し、代わりに部屋札を受け取り外へ行った。
それを見送った客達の目が、女亭主の背後に立つ少年を捕らえた。
『 そいつは新入りか? 』
『 ついさっき雇ったばかりさ。まだ右も左もわからない新品さね 』
『 いいねそういうの!初物は俺にゆずってくれよ 』
『 馬鹿言っちゃいけないよ!こんな別嬪(ベッピン)そういないんだ。準備もなしに遊ばせて、壊されちゃあたまらないよ 』
騒がしい声に蓋をするように、その上をいくけたたましさで女亭主が叫んだ。
そのやり取りを、少年は他人事のように眺めている。
彼等は何を話しているのだろう。
自分は何故、こんなところにいるんだろう。
何もかも……どうだっていいのに
……ああ
『 ──……、さい…』
『 ……?』
『 うるさい……… 』
場にそぐわない静かな声で、少年が呟く。
誰が言った?
慌てる面々が暫くあたりを見回し、暴言の主がこの大人しそうな少年であったと知った時──店は静寂に包まれた。
怒り出す者がひとりもいなかったのは、少年の弱々しい声があまりに痛ましく……そして不思議な迫力に満ちていたからだろう。
....カタン...
『 ──…今夜はいつになく静かですね。
酒に毒でも盛られて死にましたか?皆々さま 』
そんな中、二階へと続く階段の踊り場で、彼等を見下ろし嬌笑する者がいた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
30 / 107