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入社当日
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「……と、言うわけで今日から橘花くんには社長専属の秘書をやってもらうことになったから」
「えっ…秘書、ですか…!?」
入社初日、オリエンテーションが終わった後、俺は人事の関口さんに呼び止められた。
申し訳なさそうに一枚の紙を渡されると、そこにはこう書いてあった。
『社内部署移動 決定者:橘花 秋斗
所属:社長室秘書 推薦:代表取締役 月島沙季』
営業として入ったはずなのに、なぜこんなことになったのか…しかも推薦が社長直々とは…どういうことだ…?
入社早々の部署移動願いに呆然していると、これまた申し訳なさそうに関口さんがポンっと肩を叩いた。
「急でごめんね。社長のことだから色々と大変だと思うけど、君ならできるから…がんばってね」
「いや、俺、秘書なんて無理です!時間管理とかそういうのめちゃくちゃ苦手ですし!!」
「大丈夫だよ、君のポテンシャルはすごいから!きっとできる!!」
「いやいや、ほんと、まじで無理なんでっ…え、しかもなんで俺なんですか!?」
「さあ、それは社長本人に聞かないと僕も分からないなぁ」
あはは〜と笑いながら関口さんがエレベーターの上ボタンを押す。
着いたエレベーターに乗り込み、「じゃ、早速行ってみよっか」と、乗るように促される。
「あの…どこに…」
「それはもちろん、社長室!」
「いや無理ですって!」
「そう言わないでさー」
腕を引かれて乗り込めばグングン上昇していく。
さっきの申し訳なさそうな顔はなんだったんだ…
入社前まで色々と関口さんには親切にしてもらった。入社前に会社のことで分からないこととかあったらいつも教えてもらってた。
だからもちろん感謝はしている。
しているけど、まさか笑顔で押し切るタイプだったとは…
最上階で止まると、音もなく扉が開いた。
「さっ、こっちだよー」
関口さんが広い廊下の真ん中に立ち、一つずつ指をさして説明していく。
「ここのフロアはちょっと特殊でね。一番奥が社長室で、その隣に秘書専用の執務室がある。秘書専用の部屋がある会社はなかなかないから珍しいよね。今後、橘花君はその部屋で業務にあたることになると思うよ。
それから僕たちが今いる入口の左はラウンジ。右は会議室と社長の趣味の部屋だよ」
「趣味、ですか?一体どんな…」
「さぁね、それは誰も知らないんだ。うちでは社長以外立ち入り禁止で、秘密の部屋って言われているからね」
「はぁ…そうですか」
さすが大手企業の社長なだけある。まさか趣味部屋が存在するとは…
「あと橘花くん、今日は挨拶済んだら帰って平気だからね」
「え、そうなんですか?」
「うん。社長はお忙しいから、今日は顔合わせだけって言ってたよ。もう時間も遅いしね」
それならまだよかった…と、少しだけ安堵する。
正直なところ急に秘書になれと言われ、それがもう決まったことだとしても、俺には今後どうしたらいいか分からない。
営業への熱を高めていたのに…秘書って何をすればいいんだよ…
今にも頭を抱えそうな俺を見て、ニコニコと笑う関口さんが腕時計を確認する。
「あ、もう19時過ぎてるね。じゃあ僕はこれで」
「えッ!行っちゃうんですか!?」
「そりゃまだ仕事残ってるから。あとはがんばってね!」
「いや、関口さん、ちょっと待って…っ!」
ボタンを押すとすぐに開いたエレベーターに乗り込んでいってしまう。最後にひらひらと手を振る関口さんが、閉まるドアの隙間から見えた。
「………まじかよ、行っちゃった」
広い廊下でポツンと一人、キョロキョロと周りを見渡す。
仕方がない…さっさと挨拶して今日はもう帰りたい…
関口さんに言われた通り、一番奥の黒いドアへ向かい、その前で立ち止まった。
意を決してノックをする。
すると、扉の奥から「入れ」と、低い声が聞こえてきた。
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